裕太は奇妙に思う。
まるで今いる所と、その声の聞こえる所との間には、目に見えない壁が
立ちふさがっているようだ…と。
オブラートに包むように、声がわずかにボワーンとかすんでいる。
「じいちゃん!」
何とか気付かせようと、裕太が声を上げるけれど・・・
まったく相手には、聞こえないようだ。
「聞こえてやしないよ」
リュウは裕太に向かって言う。
「でも…こっちには聞こえているよ」
どうしてこんなことになるのか?
何だか妙だ…と思う。
「そうなんだよ。
こっちからは聞こえる。
だけど、あっち側には、聞こえないんだ」
リュウのひと言に、それならばもしも何かがあって、助けを
求めようとしても、聞こえない、ということなのか?
裕太はなぜだか、ガクゼンとする。
「何で?遠いの?」
洞窟は音が反響するから、実際よりも近く感じるのか?
裕太は説明しろよ、とリュウに詰め寄る。
「うーん、近そうで、遠いんだ」
これって、なぜなぞなのか?
リュウの言っていることが、よくわからない。
キョトーンとしていると、
「ま、そのうち、わかるさ」
ポンと言いおくと、まるで何事もなかったような顏をして、
スタスタと歩いて行く。
「ちょっとぉ~どこへ行くのよ」
そう聞くと、
すかさずリュウは、
「決まってるでしょう?ドローンが飛んで行った方向だよ」
だって、探しているんでしょ?」
リュウはそう言いおくと、まるで、何事もなかった顏をして、
スタスタと前を行く。