宗太郎の頭に、あるシーンが浮かぶ。

あの日、奥の部屋に連れて来られた時、自分以外にも誰かがいた…

その後、誰かが助けに来てくれた?

「あの女の子って…誰?」

宗太郎がつぶやく。

「えっ?」

「何のこと?」

清子も神林君も、宗太郎を見る。

だが先生だけは、まっすぐに宗太郎の方に向き直る。

じぃっと、宗太郎の瞳をのぞき込むと

「思い出したんだな」

静かにそう尋ねる。

宗太郎は黙って、うなづく。

 

 オジサンたちは、この部屋には女の子に写真しかない、ということに

気が付くと、さっさと部屋を出て行った。

「そんなことよりも、通帳だ、通帳!」

あくまでも、遺産の方に関心があるようだ。

「神林くんは、いいの?」

清子が、神林君を突っつく。

「うん。どうせ…見つからないよ」

ポンとそう言うので、すでにもう探した後なのだろう。

 

 

「助けてくれたのは、先生だったんだね」

 宗太郎は先生に向かって、ハッキリとした口調で言う。

「そうだ」

今度は、否定をしない。

「でも…助けたのは、ボクだけ?」

確かめるように、先生の目をのぞき込む。

「それは…どういうことなんだ?」

先生は素知らぬ様子で、挑むように宗太郎を見返す。

 

 二人のやり取りを、神林君は黙って聞いている。

(彼は…知っているのだろうか?)

清子はひそかに、そう考えていた。

 

 

 

 

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