宗太郎は、そんな雑音など、まったく耳に入らないようで、ゴソゴソ
と、扉を触っている。
「おい!そんなトコを探しても…
何にも出て来ないぞぉ~」
わざと大きな声で、オジサンは宗太郎をからかうように言った。
「ソータロー!
ねぇ、ソータローってば!」
ゲラゲラ笑うオジサンを押しのけて、清子は宗太郎の腕を引っ張る。
だが宗太郎は、清子の手をうるさそうによけると、まだ何かをしている。
「先生」
困ったように、先生の方を向くと、先生はとても落ち着いた顔をして、
「好きにさせてあげよう」
特に、焦っている様子はなかった。
「リョウくん」
今度は神林くんの方を見るけれど、彼はじぃっと宗太郎の方に注目する
だけで、何も返事をしない。
「もう」
どうなっているの?
しかたなく、宗太郎の後ろ姿を見ている。
「あっ、そうか」
いきなり宗太郎は、何事かつぶやく。
タタタ…と、その場を離れる。
「えっ」
一体、どうなっている、というの?
清子は呆然としている。
彼女が呆然としているのを、オジサンはニヤニヤしながら見守っている。
見たところ…催眠状態は続いているようだ。
(まさか…何かリスクとかは、ないのだろうか?)
信じがたいことだけれども。
どこかへ駆け出していた宗太郎が、間もなくして戻って来た。