清子は宗太郎の顏を見て、それから神林くんの顏を見る。
神林君と目を見合わせると…
「私はその時、いなかったから…」
謎の言葉をつぶやく。
「でも…神林くんなら、知っているかもよ」
そう続けて言う。
なんでそんな風に、持って回った言い方しかしないのだろう。
先ほどから、神林くんが黙ってこちらを見ている。
「キミは…昔、ここにいたんだよな?」
宗太郎は、確かめるように聞く。
「ボクたちのことを知っているのなら…
『リョウくん』のことは、知っているか?」
宗太郎の唯一の記憶、それは、夢の中で見た『リョウくん』の存在だ。
もしかしたら、これは実在の人物なのではないか、と宗太郎はにらんだ。
この頃のことは、宗太郎一家にとっては、タブーだった。
「この年に…両親が離婚したんだ」
きっとその時に、何かがあったに違いない…
そう宗太郎は、にらんでいる。
「リョウくん?」
神林くんは、オウム返しのように、そう言うと、
「知らないな」
素っ気なく言う。
「そんな昔のこと…わざわざ思い出して、どうするんだ?」
冷ややかにそう言うと、ソッポを向いた。
「キミの言う、そのリョウくんも…別に、思い出して欲しいと、
望んではいないかもしれないぞ」
そう言うと、後ろ暗い表情で、にぃっと笑う。
「神林くんは…いつまで、この家に住むの?」
背を向けて、扉から出て行こうとする神林くんに向かって、
清子が声を投げかけた。
