「足元には、気をつけろよ」
ジュンペイが事務的に言う。
(きっと、ジュンペイにとっては…当たり前なんだろうなぁ)
裕太はおしゃべりをやめ、おとなしく従う。
まるでこの洞窟は、ありの巣のようだ…
歩きながらも、裕太はボンヤリとそう思う。
このまま行けば、どこか遠くにたどり着くのではないか…
などと、裕太は夢想する。
「ここの島、色んな人が来るだろ?」
突然ポツンと、ジュンペイがつぶやく。
「えっ」
いきなり、何を?と耳をそばだてる。
「あのアベさんだって…
本当は何者かなんて、わからないもんな」
ポツリとジュンペイがそう言う。
(なんだ、ジュンペイも気付いていたのか)
裕太は黙って聞いている。
「ここの島は、大体みんな、顔見知りだからな。
知らない顏を見付けたら、すぐ(よそ者が来た)と
思うんだよなぁ」
まるでひとり言のように言う。
裕太には、それには身に覚えがあったので、なるほど、と
そう思う。
まさか自分に向かって、言っているのだろうか、と裕太は
チラリとそう思う。
「普段は、玄関に鍵もかけてないんだよ。
そう言う意識がないんだろうな。
みんな顔見知りだから、そんなことはしないって、
思い込んでいるんだろうな」
想像もつかないだろ、とジュンペイ笑う。
そう言えば…越して来た時に、母さんがじいちゃんとバトル
していたなぁ~と、裕太はひそかに思い出していた。