「おまえ…疑っているのか?」

 神林くんは、宗太郎の目をのぞき込むようにして、低い声でそう聞く。

「あっ、いや、そんな…」

宗太郎は落ち着きなく、目をキョロキョロさせる。

「いや、ちょっと…」

まさか、疑っています…だなんて、口が裂けても言うわけにはいかない。

「そんなことはないよ、誤解だよ」

 宗太郎があわててそう言うと、

「ホントかぁ?」

まだ疑う目付きで、ジロリと宗太郎を見る。

 

「そんなことより…早く出ましょ」

 せかせかとした口調でそう言うと、清子は神林君をうながす。

「わかった」

おとなしく従うと、クルリと背を向けて、扉の方へと向かう。

「あれ?」

だが宗太郎の目には、別の扉が目に入った。

「そのドアは?」

思わず神林くんを見ると、つい確かめるように尋ねる。

「えっ?」

完全に失念していたのか、一瞬宗太郎が何を言っているのか、

わからない。

「ほら!神林くんの後ろにあるドアだよ」

 まさか、気付いていないのか?

宗太郎は奇妙に思う。

「あぁ、あれ?」

だが彼はさして、気にならないようだ。

「あれはね…開かずの扉なんだ」

静かにそう告げた。

 

 

 

 

 

 

にほんブログ村 小説ブログ ノンジャンル小説へ