普通なら…玄関一杯に、チラシが散らばっていたり、何かありそうな

ものだが…

「何もない…」

 あまりにもきれい過ぎるほど、ゴミ1つ落ちてはいない。

「不自然だ…やっぱり…」

宗太郎は、頭をかしげる。

確かにいたずら書きを、消したような形跡もある。

(もしかして…やっぱり、神林くんが…ここに来ている?)

こんなところに?

なぜ?

 

 今まで、こんなにしげしげと見たことはないけれど…

思ったよりも、大きな家だ。

カーテンは閉まっているし、

窓もあいている様子もない。

人の気配どころか…

生き物の気配さえもしない。

「あれ?アイツ、ホントに…ここにいるのか?」

思わずつぶやくと

「でも…見たでしょ?」

清子が、冷静な口調で言うので

「確かに。それもそうだな」

もっとも…勝手口から、そぅっと逃げられたら、わからないのだけれど。

 

 グルリと家の周りを、見てみる。

雑草がはびこり…

木も思いきり枝を伸ばし、今にも窓ガラスに当たりそうだ。

 何か…生活感を感じるようなものはないか…と探すけれども。

たった1つ、まだ新品のものが1つ…

「自転車がある!」

家の裏口に、隠れるようにして、立てかけてあるのを見付けた。

(あった…)

宗太郎が、清子を振り返る。

清子も大きくうなづく。

だが…

(おかしい…)

宗太郎は、引っかかるものがある。

(ここまで、慎重なアイツが…こんな、見落としをするのだろうか?)

どうしても、気になるのだった。

 

 

 

 

 

 

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