それは不思議な光景だった。
洞窟の中で、滝のようにとうとうと、水が流れている。
(うわぁ~!)
これは天然の滝なのだろうか?
「この水って、どこから来るんだろうなぁ」
おそらくは、地上の清流が、こちらにも染み出ているのだろう。
(滝っていうよりも、泉のような…ささやかなものなのだが…)
そしてその泉の奥に、ポッカリと口があいているのが見える。
「あそこが、竜神の口だ」
アベさんが、まっすぐに指差した。
「あれが?」
パッと見は、ただの水の側にある洞窟だ。
だが、この泉は、とても清らかで、透き通るように美しい。
(まさか、この中に入るの?)
裕太は何となく…気になっていた。
「で、どこに落ちていたの?」
いきなり聞く裕太に、「何が?」とアベさんにもすぐにはわからなかったようだ。
「そのリモコン」
とにかく少しでも、ジュンペイの手がかりが欲しいのだ。
「あぁ」
アベさんは軽くうなづくと、
「この辺りかなぁ」
水が染み出ているところの近くを、指差した。
「ここ?」
それは、水のカーテンが打ち付ける岩盤の、ぬるぬると苔むした一部で、
歩いたらすべって、落ちてしまいそうだ。
様々な形の石が連なり、床のようになっている。
「それって、濡れていたの?」
こんなところに、むき出しに置いてあったら、おそらくビショビショで
使い物にはならないはずだ。
裕太は若干疑うようにして、アベさんを見た。
するとアベさんは、少し考えた後…
「ん?あぁ~何か、ビニールのようなものに、くるまれていたなぁ」
思い出すようにして言った。
daisysackyのmy Pick