裕太の様子に気付いたのか、アベさんはピタリと歩みを止める。

「悪いが…少しだけ、付き合ってくれ」

「え~っ!」

 そんなの…聞いていないぞ?

思わず裕太は、口をとがらせる。

だが、ピタリ…とアベさんは再び、足を止めると

「しぃ~っ!」

すっと、柱の陰に身を潜ませる。

灯りを消し、息をひそめて、裕太もアベさんに倣う。

少し先の方から、懐中電灯の灯りが、こちらの方へ近付いて来る。

 

「どうだ?いたか?」

 男の声がする。

この声…どこかで聞いた、と思うけれど、それがどこだったのか、

すぐにはわからない。

 アベさんは身を小さく丸めて、静かにうずくまっている。

なんでこの人は、ここにいるのだろう?

ふと裕太は気になる。

この人は…彼らの協力者じゃないのか?

(どうして、アベさんまで、隠れるの?)

(いたかって…それって、ボクのこと?)

 あの謎の集団は、あそこで何をしていたのか、やはりわからないままだ。

ただ、わかるのは、アベさんは決して、ヤツらの仲間ではない…

ということだけだ。

目的は不明だけど、自分たちを襲うつもりはない、ということだけは、

何となく肌で感じる。

あともう1つの可能性は、もしかしたらジュンペイが、何かしでかした…

ということだ。

(だとすると…ジュンペイは、一体、何をしたんだ?)

たちまち裕太は、憂鬱な気分になった。

 

 

 

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