裕太は見つかったらおしまいだ…と、身体を小さく縮め、緊張のあまり

叫びだしたくなる。

男たちの声が、耳を弄するばかりに、さらに大きくなり…

クライマックスにさしかかる。

ひときわ大きな声で、呪文を唱えると…

バッとまるで命を吹きかけられたかのように、炎が勢いを増して大きくなり、

男たちは天を振りあおいで、恍惚の表情を浮かべて、目を閉じた。

 

 しばらく沈黙が流れ、祈祷師が居住まいを正すと、男に向かい、

「目的のものは…この近くにある」

おごそかに、そう告げる。

すると男は

「それは、どこですか?」

切羽詰まった声で、祈祷師に詰め寄った。

「それは…私の仕事ではない。

 私はただ…祈りをあげるだけだ」

リンとした声で、言い放つ。

「誤解するな。私はおまえたちの味方でも、仲間でもない」

そう言うと、さっさと片付け始める。

「でも…せめて、ヒントだけでも!」

気色ばんだ声で、男はさらに詰め寄る。

どうやら、目的のものは見つからないのだろう。

それで祈祷師に頼んだ…と思われる。

「ならば」と祈祷師は杖を高く掲げると

「無心の心で、探すのだ。

 純粋な子供の目で探せば…きっと見つかるだろう」

 

 裕太にも、チラリとその祈禱師の横顔が見える。

その顔は…誰かに似ている…と思ったけれど、

それが誰だったのか…どうしても思い出せない。

 一瞬見つめる裕太と、目が合ったような気がしたけれど…

すぐに目をそらした。

(もしかして、黙っていてくれたのか?)

裕太には、それがどういうことなのか、よくわからなかった。

 

 

 

 

 

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