ここは小さな家だ…
何でこの家にたどり着いたのか、皆目見当がつかない。
(だけど…)
恭介は、我ながら自分でも驚いている。
(それほど、嫌な感覚はない)
何だろう…とても懐かしい空気を感じる。
そうして、まるで吸い込まれるようにして、中に入る。
(どうしてなんだ?
ここは…見たことがある)
いきなりブワワァ~と、自分の中を強い風が吹くのを感じた。
周りがセピアカラーに変わる。
かすかに聞こえるのは、あのオルゴールと同じ曲。
ただしオルゴールではなくて、ピアノの音だ。
(なんで?)
知りたい…
でも、知るのが怖い。
(どうして、怖いのか?)
まるで、記憶の扉をこじ開けるような、感じがする。
(思い出したら、いけない…
きっと、つらい記憶なんだ…)
後戻りしようか、とも思うのに、部屋にフワッと灯りが灯った。
まるで、この家に血が通い始めたようだ。
(入ってはいけない、入ってはいけないんだ…)
そう思うのに、足が勝手に、引き寄せられるように、進んで行く。
(止めるんだ!)
止まってくれ…
キュッと目を閉じる。
するとふいに、気配を感じる。
「あら、キョウちゃん!どうしたの?」
懐かしい声が聞えてきた。
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