(鬼火に案内させるとは…前代未聞だな!)
思わず恭介は苦笑するけれど…
「まぁ、わからないことがあれば、調べるまでだ」
すっかりその気になった。
「よし、行くかぁ~」
自分に喝を入れると、大きく一歩を踏み出す。
濃い霧の中を、突き抜けるように進む。
さっきまでの見事な花園は…振り向くと、いつの間にかどこかへ消えていた。
(ここは、どこなんだ?)
やはり…ここは、現実の世界ではないのか?
疑問に思いつつも、その青い炎を見失わないようにと、
ひたすら目で追っている。
霧は足元まで、スッポリと覆いつくされている。
そして全くの無の世界だ…
時の流れさえも、ここではわからない。
おそらく携帯を見ても、何も表示がされないことだろう。
不思議なことに…もうそんなことぐらいでは、驚かなくなっている自分がいる…
犬井さんが消えたことも、
温室が消えたことも、
ホテルがどこにあるのかも、わからなくなっていることも…
みんな、それが当たり前の出来事のように、感じていた。
(おかしなものだな!)
恭介は苦笑いをする。
ただ…青いその炎が、今度はどこに、自分をいざなってくれるのか…
そのことに、心を奪われていた。