「えっ」
それは、当然のことなのだ。
その『お嬢さん』がいる、ということは、もちろん家族もいる。
家族がいる、ということは、使用人たちもいるだろう…
単純に考えると、当然のことなのだが…
ここに初めて来たときは、この屋敷はただの廃屋だった。
だがこうして見ると、かなり大きい。
「ホテルにするのは、この建物ですか?」
恭介が聞くと
「そうだ」
老人はうなづく。
「じゃあ、皆さんのお住まいは?」
続けて聞くと、山下さんという女性が、ハッと息をのんだ。
「白井さん」
彼女が、老人の腕を突っつく。
老人は、フッと表情を崩すと
「大丈夫だよ、この人は…」と彼女を振り向く。
「そうね、そうよね」
2人が目を見合わせて、うなづいた。
(どういうことだ?)
何か含みのある言い方だ…
白井さんと呼ばれた老人は、恭介を振り向くと
「ホテルは本館。
母屋は別棟になります」と指差した。
恭介は、あれ、と気付く。
「ということは…お嬢さんの部屋だけ、本館に?」
思わずつぶやく。
するとはぁ~と、山下さんがため息をつくと
「お嬢さんのお部屋は、別にあるんです。
お嬢さんはここがお好きで、よくこちらでお休みになるんです」
そう言う。
なるほど、そういうことか…
羨ましい話だ…
わかったような、そうでないような気がする。
「外を見せてもらえませんか?」
思わず恭介は、気になっていたことを口にする。
すると
「いいわよ」
廊下の向こうで、女の子の姿がチラリと見えた。
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