「さては…彼女に逃げられたのか?」

 いきなり切り出すので、思わず彼はブッと吹き出しそうになる。

「おっ」

同僚は、ニヤリと笑うと、

「さては、図星だな!」

ドンマイ、と肩をたたく。

恭介は口元をぬぐうと

「違うってぇ~逃げられた、というか、追い出された、というか…」

ぼそりと口の中で答えた。

すると、口の中に苦いものがこみ上げて来るように…

先日のいさかいを思い出す。

「おまえ、しかし…よくわかったなぁ」

さすが同期のエースは違うなぁ~

しみじみと思う。

「おまえ…人のことを感心している場合か?」

投げてよこした缶コーヒーのプルトップを開けると、ゴクゴクと

喉を鳴らして勢いよく飲み干す。

 

「おまえ、このままだとヤバイぞ。

 アイツ・・・おまえをどうしようとしているか、知ってるか?」

急に真剣なまなざしになると、彼の方を気づかわし気に見た。

「あっ、まぁ~クビなのかなぁ」

缶を持てあそびながら、恭介は、なんてことない、という顔をする。

「クビ?

 まぁ、そうだな。

 正確に言うと、契約打ち切りってことかな」

彼の顔色をうかがいながら、同僚は彼をのぞき見た。

 

やはりそうか…

思ったよりも、シビアな現実に、彼は

「そうだよなぁ」とため息をつく。

こうしている間にも…話がどこまで進んでいるのか、わからない…

同僚は彼の肩をゆさぶると

「何が何でも、ネタをつかむんだ。

 おまえが出来る、最後のチャンスは…たぶん、それだけだ!」

彼は最後の一口を、ゴクリと飲み干すと

「がんばれよ、相談にはのるぞ」

空き缶をクシャリと握りつぶすと、彼の肩をポンとたたいた。

そうは言ったものの…どうしたらいいものか、と彼の頭は

一杯になった…

 

 

 

 

 

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