じぃっとエラが見つめると、信子は黙って微笑んだ

それは嬉しそうでもあり、寂しそうでもあり…

微妙な微笑みだ。

本当に信子にとって、ベストな状態ではないのかもしれない。

それでも彼女のたたずまいは…まるで老婆のように、人生に疲れ切り、

全てをあきらめきった、中年の女性のようだ…

エラはそんな風に感じた。

 もちろん大家さんも気になるようで、静かに2人を見守る。

しかもあえて、何も言葉にはしなかった。

 

 信子は寂しそうな顔をして、頭を振ると、

「素敵ですね…」とだけ言った。

「なら!」

思わずエラが力強く声を張ると、信子はさらにかぶりを振る。

「でも、いいんです…」

とだけ言うと、黙ってしまった。

 それきり口を開かない信子に、何とか心を開かせたい…と、

内心焦っているエラに、

「あなたは、あなたのことだけを、考えればいいのよ」

大家さんが、静かに声をかける。

 その言葉の意味を考えていると、大家さんは穏やかな顔で微笑み

「子供はね、大人に気を使ってちゃあ、ダメよ」そう言うと

「エラ、あなたもね」

エラの瞳をじぃっと見つめた。

エラは大家さんの言わんとしていることを、理解しようとする。

大家さんはふぅ~と息を吐くと

「わかったわ、協力するわ」とだけ言った。

「とにかくね、後悔することだけは、やめなさいね!」

そう釘を刺すと、エラの顔を穴があきそうなくらい、真剣なまなざしで

見つめた。

 

「それじゃあ、私はどうしたらいいの?」

今度は真剣な顔つきになる。

そこからはエラも、キュッと顔つきを引締めた。

何しろおとぎの国に帰れるかどうかが、かかっているのだ。

エラはまっすぐに、大家さんの方を見ると

「まずは、その森の中を案内してください」

ためらうことなく言った。

 

 


 

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