「貸して」
じれたように、オジサンが手を伸ばすと、裕太ものぞき込んだ。
そのネズミ色の紙切れは、茶色いシミがところどころにあり、、かなり汚れている。
何か書いてあるように見えるけれど…
「うーん、見えにくいなぁ」
ガッカリしたように、オジサンもつぶやいた。
エンピツで文字が書かれているようだが、かすれてしまい、何が書いてあるのか
判別しづらい。
おそらく4文字か5文字の単語らしいものが、書いてあるようなのだけれど、
さらに残念なことに、折りたたんだ部分がくっついた所もあり、
むりやりはがすと、破れてしまうので、下手にはがすことも出来ないのだ。
それでもわずかに、文字が見える。
「なんだろう、これ?」
「ん?えっ?」
「の、みたいなのもあるよ」
3人3様、好き勝手に並べ立て、頭をくっつけてその小さな紙片をのぞき込む。
「んーなんだろう?わかんないなぁ」
頭をくしゃくしゃと、オジサンはかきむしる。
1番残念がっているのは、このオジサンかもしれない。
「これ…預けてくれないか?
もうちょっと、読めないかどうか、確かめてみるよ」
悔しそうにそう言うと、オジサンは裕太とジュンペイに向かって、真剣なまなざしを向けた。
「なぁんだ!」
つまんないの、とガッカリしたように、大きな声でジュンペイが叫ぶ。
(ガッカリしたのは、こっちだよぉ)
ようやく何かを見つけた、というのに…
肝心のメモが読めないとは!
裕太のやる気も、すっかりそがれてしまった。
「ガッカリするのは、まだ早いぞ」
あからさまに元気のない2人を見て、オジサンが励ますように言う。
だがさすがに…ここまで来るのに、かなりの体力を消耗したようで…
オジサンの目の下には、大きな陰りが見えていた。
ストンと肩を落とす3人を見て、老人は腕組みをしたまま、
「なんだ、もうあきらめるのか?」
あざけるように言った。