「何から何まで、すまん…助かるよ」

 エラは自分のことなのに、蚊帳の外のようで、ぼぅっとした情けない顔で、突っ立っている。

するとカスミがエラの背中をたたくと…

「さぁさ、まずは…いるものをそろえないとね」

あっさりとそう言うと、先ほどの剣幕はどこへやら…

素早くエラの全身に、視線を走らせる。

昨晩シュウヘイに借りた、Tシャツと短パン姿で、ブカブカなのか、手で時折

ぐぃっと持ち上げている。

カスミはまだぼぅっとしているエラと、心配そうに見ているシュウヘイを振りかえると

「何してるの?なんなの、女の子の着替えを見るつもり?

 それって、犯罪だよ」

キッと責めるように言うと、シュウヘイはあわててクルリと背中を向ける。

「あっ、ごめん」

あわてて廊下に出ると、キッチンとの境目にあるドアを、きちんと閉めた。

 

 カスミは、もともと世話好きな性格なので、決してエラにイジワルするつもりはないようだ。

もっともシュウヘイに、ちょっかいを出すようなら、話は別なのだろうけれども…

手早く持ってきた服を、袋から取り出すと

「はい!着替えたら、買い物に行くわよ」と、有無も言わさず押し付けて、さっさと部屋から

出て行った。

 

 廊下に出ると、手持ち無沙汰に、壁に寄り掛かっているシュウヘイを捕まえると

「ちょっと」と、部屋の外に連れ出す。

非常階段のところまで引っ張って行くと、腕組みをして、シュウヘイをにらみつける。

「それにしても…まぁ…ずいぶん若い子に、手を出したわねぇ」

感心するわ、とカスミはきわめて感情を抑え気味にして、声をひそめて言う。

するとシュウヘイはやけにムキになって、

「それは誤解だ」

かぶせるようにして、彼は言った。

カスミも、まだ衝撃は抑えきれず…先ほど見た、女の子のスラリ…とした

若々しいからだを思い返すと、まだ気持ちの整理がつかない。

「あのね、気持ちはわかるけど…あの子の将来も、考えなさいよね」

カスミは思わず強く言うと、少し顔をゆがめた。

 

 


 

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