シュウヘイはボンヤリと考え込みながら、
「あの子は100%純粋培養だから、だますとか出来るような子じゃない」と言い切った。
すると受話器の向こうから、ため息が聞えてくる。
「なんでそんなに、ムキになるの?
やっぱりのせられるんじゃないの」
呆れた…というか、やや気色ばんだカスミの声が響いて来る。
一体、その女って、どんな子なんだ?とカスミは思う。
こんな人のいい人間を丸め込むとは…と。
「そんなことはない。
おまえに、そこまで言われるいわれはない」
ピシリとシュウヘイが言い切ったあと、ふいに息をのむ気配がして
「そうですか?そうなんですか?」
幾分声が固くなったので、さすがにシュウヘイも、ちょっといい過ぎたかぁと、
少しあわてるのだった。
カスミさんは妹…とはいっても、本当の妹というのではない。
あくまでも彼にとっては、妹のような存在なのだ。
幼い頃から兄妹のように育ってきたのだ。
一緒にお風呂に入ったこともあれば、
一緒にオムツをかえてもらったことも、寝たこともある。
シュウヘイのことは、カスミが誰よりも、よく知ってるつもりだ。
だからそんな得体の知れない女になど、渡すわけにはいかないのだ。
「なによ、そんな馬の骨」
ついイラッとして、カスミが言うと、シュウヘイが少し悲しそうな顔になり、
「おまえには…そんな風に言って欲しくないな」と、つぶやくように言った。
だが昨日の晩も、トイレの使い方がわからずに、オタオタしているエラの姿をふいに思い出して、
思わずヘラリと笑う。
「そうだなぁ~アイツは、一体どこから来たんだろうな?
まるで宇宙人か、過去からやって来た浦島太郎みたいな、女の子だったなぁ」
思い出すうちに、思わずふわりと優しい笑みがこぼれるのだった。