もちろんこれは、予想通りの展開だ。
受話器の向こうで、自分よりも年若い幼なじみの女の子から
まさかのお説教を食らうのだった。
「だってさ…嫁入り前の女の子が、独身のさえない男の家に、転がり込むなんて、
どう考えたって、ダメでしょう。
ましてや婚約者でもなければ、兄妹でもない。
恋人というわけでもないし、結婚するわけでもないんだからさぁ~」と言うと、
突然いいことを思いついた、とばかりに
「なら!」とカスミが大きな声を出す。
「いっそのこと、結婚してしまえば?」
思いつきとはいえ、彼女の爆弾発言に、さすがのシュウヘイも絶句する。
「そ、それはちょっと…」
いくらなんでも、出会った翌日で、それは乱暴すぎるだろう…と、戸惑うシュウヘイに、
「だよね?」
幾分冷たい口調で、カスミが言った。
(アイツは一体、何を考えているんだ?)
よく知っているはずのカスミの考えていることが、まったく理解できないシュウヘイなのだった。
だがそれで、納得したわけではない。
「もう!」
ちょっと怒ったような声が響いた。
「お兄ちゃんは人がいいから、すぐにだまされるんだから!
どうせ、結婚詐欺みたいな女に、だまされているのよ」
受話器の向こうでは、カスミがかなり戦闘モードだ。
「そんなこと言ったって…本人はかなり、マジだったぜ?
あれはよっぽどの世間知らずか、よっぽどの天然だよ」
なぜだかシュウヘイはムキになって、エラをかばおうとさえしたのだ。
そんな義理はない、というのに…なぜそんなに彼女をかばうのか。
シュウヘイの脳裏には、先ほどのエラのトンチンカンな行動が、焼き付いて離れなかった。
(あれは、普通の反応じゃない。おそらく本気なんだ。
見た人じゃなければ、理解できないだろうなぁ~)
でもなんで、そんなにあの子のことがきになるのか、彼にはよくわからないのだった。