「みんなはもう、慣れっこになっちゃって、何にも言わないよ!
だけどあのオジサン、頼まれたらなんでも引き受けてくれるって、評判だよ!」
さも嬉しそうにそう言うと、ジュンペイは自分の自転車の前かごにある、ドローンを見つめる。
これもそうなのか…
裕太はドローンに目を向ける。
自転車とドローン。
全く違うものだけど、あのオジサンにとっては、きっと同じなんだろう。
すごいなぁと、裕太は妙に感心した。
パッと見、無口なオジサンなのに、案外頼りになるかもしれない。
もしかしたら、何か助けてくれるかも…と思うと、
もしかしたらオジサンに聞いたら、なんでも答えてくれそうな…
そんな気がしてきた。
フェリー乗り場から、グルリと迂回して、ようやく自転車屋にたどり着く。
するとやはり『ただいま休憩中』の札が、軒先にぶら下がっていた。
「あぁ、やっぱりそうかぁ」
午前中お客さんが来なかったのだろう。
ガッカリしたように、ジュンペイが入り口の貼り紙を見つめる。
何度見ても、文面は変わらないので、さてどうしよう、と2人は立ち止まっていた。
「ねぇ、オジサンの携帯の番号とか知らないの?」
ふと思いつき、裕太は聞いてみる。
するとジュンペイは顔をしかめて、
「ダメダメ」と大きく頭を振った。
「オジサンはさぁ~携帯を持つと、縛られて監視されてるみたいだからって、
絶対持ちたがらないんだ」
キッパリと断言するように言う。
「だって、不便でしょ?」
「本人は、特に困っていないから、たぶん変わらないと思うよ」
やけにハッキリと言うので…じゃあどうするんだよぉ、と裕太は渋い顔をした。
この後、どうしよう…
と、裏口の方へ、目をやると…
何やらゴソゴソと物音が聞える。
「あっ」
裕太はすぐさま、ジュンペイを見る。
ジュンペイは「しっ」と指を立てると、ゆっくりと店の裏側へと回り込んだ。
