コンクリート造りの校舎の入り口には、木製の靴箱がズラリと並んでいる。
思ったよりも、高さがなくて、裕太の背丈よりも低いくらい。
おそらくは、低学年の子供でも、簡単に届くように…ということなのだろう。
しげしげと名前を眺めていると、
「幼稚園も、近くにあるよ」
さり気なくジュンペイは、裕太の横顔に声をかける。
「見る?」と裕太を振り向く。
裕太はどうしよう、とじいちゃんを見ると、
「まぁ、とりあえず後で」
代わりにじいちゃんが答えた。
靴箱の中は空っぽで、おそらくまだ新学期が始まってないからだろう…
「ここは、1年生のだよ!
ボクたちのは、こっち!」
ジュンペイはズンズンと、奥へ入って行く。
空っぽの靴箱の前には、スノコが敷いてあり、歩いていると
ギシギシと音を立てた。
「うわぁ~何だか、なつかしいなぁ」
そんなに昔のことではないのに、久しぶりに学校のニオイがする。
上履きのゴムのにおいと、洗ってないクツのニオイ…
かすかに給食のにおい。
かびくさいにおい。
ほこりのにおい…
そんな様々なにおいが、かすかにホコリと共に立ち上ってきて…
裕太のテンションがわずかに上がってくるのを感じた。
「学校は、どこへ行っても、やっぱり同じなんだなぁ」
しみじみと裕太は言う。
「そうかぁ~?違うと思うけどなぁ」
キョトンとした顔で、ジュンペイは裕太の顔を見る。
もちろん、建物も違うし、教室の中も違う。
でも学校という生き物が…同じにおいをして、裕太たち、子供を待ち構えている、
そんな気がしたからだ。
もちろん、裕太の前の学校と違って、靴箱の数はさほど多くはない。
背の低い木の箱が、無言で何列か並んでいるだけだ。
「昔ね、イタズラされて、靴箱から降りられなくなった子供がいるんだって!」
得意そうに、ジュンペイが言うと
「そうだなぁ、そんなこともあったっけなぁ」
じいちゃんも大きくうなづく。
あ、やっぱりいたんだ…
その声に、ジュンペイは驚きの顔をする。
コンクリートの下足箱を過ぎると、トイレがあり、1階の教室に続く廊下と、
階段が見える。
「ここをまっすぐ行くと、職員室と給食室につながっているんだよ」
まっすぐに指をさすと、ジュンペイは廊下の向こうを見つめる。
裕太はずっと続く廊下へと、その廊下に面する場所を、チラリと見つめる。
そうするとようやく…自分はこれからこの学校へ通うんだ…という実感が、
湧き上がってくるのを感じていた。
**ここで余談***
実は骨なし、子供の頃…掃除時間に靴箱に上って(なんでだったか、覚えていませんが)
このエピソードのように、降りられなくなったことがあります。
とてつもなく高くて、怖かったことを、今でも忘れられません…
良い子は真似をしないでね**
