どっちにしろ、もう1人の女の子の意思にまかせよう…とエラは腹をくくる。
思いがけずその日は、今までで1番、気持ちが落ち着いているように感じた。
その部屋はとても可愛らしくて、決して豪華ではないけれど、これまでにないくらい、
素敵な部屋に思えた。
「お嬢さんは…ここに来たことがあるんですか?」
翌朝、着替えを持ってきた、年若いメイドのミキが、エラに声をかけた。
その時はすでに、エラは目覚めていて、窓を開けて、部屋の空気を入れ替えていたので…
入って来たミキは、驚いたように目を見開く。
前に来た信子の時は、寝起きが悪い方ではなかったけれど、
そこまで早起きではなかったので…
てっきりこの女の子(エラ)が、ここに出入りする洗濯女か、下働きの何かかと
思っていたのだ。
丁度ベッドメイクを整えていたエラは、ミキの方を見て、にっこりと微笑む。
「いいえ、なぜ?」
楽しそうにエラは言う。
そうして、やはりこの世界の方が、肌になじむなぁ~と、実はひそかに思っていた。
するとミキは、エラの側に近付いて来ると…
一緒になって、ベッドのシーツをピンと伸ばして、直し始める。
パンパンと枕をたたいて、形を直すと…
ミキはさり気ない調子で、
「この前いたお嬢さんよりも、あなたの方が…
ずっと王子様とお似合いに見えたものですから…」
サラリと言う。
「これはマーサにも、王子様にも、内緒でお願いします」
怒られちゃいますから…と、この若いメイドは、ヘラリと笑う。
フワッとベッドカバーを掛けなおすと、
「そう?」とエラは笑う。
「それよりも!」
ハタとミキは手を止めると、
「お嬢さんは、こんな下働きのようなことは、しなくてもいいんです」
あわててエラの手をおさえる。
「あら、なぁぜ?」
エラはニコニコと笑った。