(でも どうして?)
ドレスはすぐに、泡のように消えたのに…
エラにとって、ガラスの靴が、最大のナゾだった。
そんなエラの様子には気付かずに、1人楽しそうに店内を見回すと、
「まだ若いしね!
こんなに可愛いんだしね!
オシャレして、きれいにして、恋をしなくちゃ ダメよ!
女の子なんだもん」
なんだかとても嬉しそうに、ユリカさんはエラの手を引っ張って入って行く。
そうして目の前にいる店員さんをつかまえると…
「この子にピッタリの服、もらえませんか?
適当にみつくろってもらえませんか?」
エラの背中をやや強引に押すと、店員さんの前に押し出した。
「じゃあ、どうぞ こちらへ」
店員さんは笑いをこらえ、試着室の方へと誘導する。
その間に、ユリカさんはせっせと、服を試着室に差し入れて行く…
(本当は持ち込みは、1回につき2着までなのだけど)
着せては、新しいのを差し出し、
「うーん、これかな?」
また違うのを差し入れて、2つある試着室の1つを占領している。
こんなこと…していていいの?と思うのだけど、まったく頓着なく
ユリカさんが行ったり来たりしているので…
おそらくいくら言っても、止めないだろうと思うのか…
エラが講義するように、じぃっと見つめても、
「いいんじゃない?試すだけ試して、気に入ったのを買えば。
それじゃ、だめ?」
とても軽い調子で、ユリカさんは楽しそうに言った。
そんなのでいいのかと思うけれど、それでも鏡の前のファッションショーは、
エラにとってもまんざらでもない気分なのだ。
疲れるけれど、心踊るものだなぁ~と。