「え~っ?」

 上の姉さんが、母親の発言に頬を膨らませる。

正直、義理の妹であるエラのことは覚えていない…

関心がない、というのもそうだけれど…

舞踏会以来姿を消して…なぜだか存在自体を忘れているのだ…

下の妹もそうで

「よその女のことは、もういいじゃない」

母親のように、執念深い恨みとかあるわけでもない…

目の前にいない人物のことなど、もう眼中にないのだ。

 

 娘たちの反応の薄さに、継母は余計にイライラがつのるけれど…

当のエラのことは、よく覚えていない

(さすがの魔法使いも、継母の恨みつらみまでは、消すことが

出来なかったようだ…)

何しろかわいい娘を鼻にもかけなかったため…

娘のやけ食いに拍車をかけて、とてつもなく、コロッコロに太ったのだ。

親ばかで見ても、やはりみっともない。

「それよりもあなた!少しはヤセル努力をしたらどうなの?」

下の娘が、上の娘をからかう。

「あんただって、香水の付けすぎよ!くさいったら、ありゃしない」

「なによ、あんただって!

 王子様に、見てももらえなかったくせに!」

「なによ、姉さんだって!」

「キー!はむかう気?」

 いつものように、にらみ合い…(不毛なケンカだ)

今にもつかみ合いそうな勢いだ。

横からかっさらった謎の女のことは、もう忘れた。

それでも女の闘いは、日々繰り広げられ…

さすがの継母も、もううんざりしているのだ。

 

「いい?あんたたち!

 こうなったのも、エラが王子様をたぶらかせたせいなの!」

正直顔も忘れてしまった女のことを、それでも怒りに燃えている…

ただ復讐することだけを、生きがいにして、密かに水面下で

動き始めていたのだ。

「とにかく今は、この状態を何とかしないと…

 私達はじきに、物乞いにまで落ちてしまうわよ」

脅すように言うと…

娘たちは、激しく泣き出した。

「何とかして…この婚約パーティーに、うまくもぐり込むのよ!

 そうしたら…あの子にうまく、近付くのよ!」

厳しい口調で言うと、上の娘は、涙で濡れた顏を上げ、

「母さん!」思わず母親の顔を見つめる。

「あの子の仕打ち…私は絶対、忘れないわよ!

 きっと、思い知らせてやる!」

 怒りに燃える、激しい口調で継母が言うと、その激しい剣幕に

娘たちは怯えて黙り込む。

 

 こうして継母は、昔自分に気が合ったと思われる(本人の思い込みも

多分にあるけれど)男たちに、かたっぱしから声をかけ…

城に乗り込む計画を進めていた。

「確か、反王子派がどこかに追放になった、と聞いたけれど…」

早速その噂を、昔の情夫に聞き出すと…我が身をかえりみることなく、

己の復讐の目的のため、もう1度返り咲きを決意して、どんなことでもしよう…

と継母は心に誓うのだった。

だが王子は…そんな水面下の出来事には気付いてはいない。

ましてや実際の所、エラがこの世界にはいない…ということは、

王子と魔法使いと信子しか、知らない秘密であり、

まだ公にもなっていないのだ。

この時にはまだ、暗い噂のことなど…誰も知る由もなかった…

 


 

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