ケイさんは穏やかな表情になり、はぁ~とケンタたちを見ると、
静かに話し始めました。
「今でも…覚えて居るわ。
紫のバラの花壇の真ん中で、そこだけが真っ赤に染まっていたの…」
それはあまりにも、鮮やかな色が広がっていた…と思い出します。
目をつむると、今でもハッキリと…
色とりどりの花の中でも、特にあの紫のバラが、深紅に染まるほどに…
その中心に、倒れているお母さんが、まるで白雪姫のように、
眠っているように見えました。
少し青ざめると、ケイさんは肩を震わせます。
今でも夢に見るほどに…忘れられないのでしょう。
メアリーさんはその肩に、そっと手を触れると、ケイさんは静かな口調で、
話を続けます。
「私…亡くなった赤ちゃんの代わりに、引き取られてきたの。
それなのに…母さんは心が壊れたまま、結局私のことを
見てくれなかったのよ」
うっすらと、目に涙の被膜が張るように…うるんでいました。
すると背後の方から、
「そんなこと、ないわよ」
女の子の声が聞こえてきました。
「えっ、だれ?」
聞きなれない声に…思わずビクリと肩をすくめると、
鋭い声を上げます。
「ヒエッ!」
カイくんの甲高い悲鳴が、辺りに響きます。
一体、誰だ?
もしかして、あの女の子?
もはや周りのことなど、かまってはいられないようです。
子供たちは急に体を寄せ合って、声のする方向をおそるおそる見ました。
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