颯太もまた、言葉を失い、呆然と立ち尽くした。
「うそぉ、マジで?」
「えぇ~っ、なんでぇ~?」
他に言葉を忘れたのか、というくらい、ただそれだけを繰り返して言う。
今度は顔を隠すことなく、仁王立ちで立っていた、その人は…
先ほどから、悲鳴のような声を、子供たちが漏らすので…
ぐっと眉間にしわをくっきりと寄せて、
「なんだよ、君たち!感動の再会なのに、その態度は…」
とボソリと言うと、
「ないだろ?」
急に口をにぃっと横に広げて、ニヤリと笑った。
「ねぇ、ユメじゃないんだよね?」
裕太は颯太を指先で突っつくと、こそっと小声でささやく。
颯太はクールに「そうだよ」と言うけれど…颯太自身だってもちろん、
信じられないのだ。
だって、そんなことがあるわけがない。
だって、その人は…
男の姿をもう1度、足の先から頭の先までしっかりと見つめる。
「足は…あるよね?」
「あぁ、そのようだ」
つられて颯太も、チラリと足先を見つめて言う。
「夢じゃないよね?
まさか…双子とか、そっくりさんとか?」
そうささやくと、ハハハハハ…
豪快に笑う声が響き、
「ワシは死んではおらん!今もほれ、この通り…ピンピンしておる」
裕太と颯太に向かって、手と足をプラプラしてみせる。
それから軽く頭をかくと、
「君たちの事…気になって、ここまで来たのに…
それにしても、ひどいいわれようだな」
言葉とは裏腹に、何だか弾むような口ぶりだ。
そこには少しも、うらみとか、文句とか、高圧的な態度ではなく、
ひどく困ったような…からかう口調も混ざっていた。
「まさか2人で…夢を見てるんじゃないよね?」
それでもしつこく、裕太は聞くと、こわごわとその男のことを見ていた。
だってその人は…数か月前に、こつ然と裕太たちの目の前から、
姿を消した人だったからだ。