「だったら…」
ためらうタカシくんに、カイくんはまっすぐに顔を見ると、
「ここであきらめたら、男がすたるだろう?
行くに決まってるじゃないかぁ」
ポン!と勢いよくたたきました。
「いいのぉ?」
呆れたように言うケンタに…
「いいの、いいの!」
またも楽しそうに、大口を開けて、ガハハ…とカイくんは笑いました。
ケラケラと笑うカイくんの左頬には、みみずばれのようになり、まだ
赤味を帯びています。
一体、カイくんのお母さんは、どんな人なのだろう?
ケンタはふと、思います。
そういえば…と思い出すと、御迎えの時はいつも、カイくんは最後まで
残っています。
『自分はかぎっ子だ』といつだったか、通園バッグに、キーホルダーで
取り付けてある鍵を、自慢気に見せてくれたのを思い出します。
もしかして…おっかないのかな?
ボクたちも、怒られちゃうのかな?
なんて…そんな気持ちになり、ケンタがチラリとカイくんを見ると、
その視線にすぐ気付いたのか、
「なんだよぉ~
うちの母さん、おまえのこと、取って食ったりしないゾォ」
カイくんは大きく目を見開くと、またケラケラと楽しそうに笑いました。
それからタカシくんを見ると…タカシくんも目を丸くして、
ケンタの方を見ています。
やっぱりタカシくんも、カイくんのお母さんを見たことないのかも
しれません…
「ねぇ、今日はメアリーさん、来るんだろ?」
カイくんが確かめるように言うので、
「そのはずだけど?」
ケンタはもう1度、思い出すように言いました。
