「もう…あのオジサンは、いないと思うけど…」

裕太がヒトリゴトのように言うと、真剣な顔をして、颯太が裕太の顏を

のぞき込んでいる。

「それって…死神の仲間なのかなぁ」

眉をひそめて、不安そうに、目の前にそびえる白い建物を見上げた。

こわごわと…まるでその黄色いテープのすき間から、顏をのぞかせるのでは

ないだろうか…と、辺りをキョロキョロと見回す。

だが…昨日の出来事がウソのように、人の気配はまったく感じられないのだ。

「この反対側って…どうなっているのかなぁ」

ボソリ…と颯太が言うと

「反対側?」

裕太にしてみれば、それは盲点だった。

まるっきり念頭にもなかったので

「さぁ?」

答えることもできない。

「反対側って?」

「灯台の裏側?」

おそるおそるのぞいて見るけれど、

裏側って、あったっけ?

そもそもそんなところに、まったく興味もなかったユウタだ。

きょとんとしていると、颯太が

「ちょっといい?」と、いきなり立ち上がる。

裕太はボンヤリとしたまま、颯太のすることを、黙って見ている。

座っていた石から立ち上がると、まずはそのすぐわきに入り込み、

木の後ろに回り込むと、灯台の入り口の辺りに張られたロープの所まで、

ズンズンと近付いて行く。

 

「あぶないよ!崖が崩れたら、危険だよ!」

あわてて裕太がとがめるように、声を張り上げると

「わかった」

颯太は短く答えて、慎重な足取りで、ゆっくりとその脇に回り込んだ…

「えっ?」

颯太の姿が、木の陰に隠れると、裕太はあわててその後を追いかける。

そこには今まで、足を踏み入れたことがなかったので、裕太は戸惑う

ばかりだ。

灯台の裏側は…雑草に覆われた、急な崖になっている。

「うーん、ここには、なんにもないかぁ」

あきらめたような颯太の声が聞こえてきた。

 

 

 

 

 

 

 

にほんブログ村 小説ブログ ノンジャンル小説へ
にほんブログ村
人気ブログランキング 宝の島を探しに行こう