裕太はと言うと、今にも崩れそうならせん階段を、こわごわと見つめている。
赤さびの目立つ、この階段。いつ崩れてもおかしくない。
そのために、灯台の入り口に、ロープを張っていたのだ。
誰もがためらうような、古い階段。
裕太は意を決して、これでもか…というくらい、スローペースで
上がって行く。
そうでもしないと…ステップが、崩れ落ちてしまう…
それを恐れて、慎重に足を踏み出すのだ。
手すりは赤さびだらけで、握ると真っ茶に、染まりそうだ。
匂ってみると…昔懐かしい、鉄棒の匂いがした…
ヒヤヒヤしながら、歩いてみると…どこからか、磯の香りが、
かすかに立ち上ってくる。
この男は、一体誰なんだ?
再び、歩を進めていると…
あらためて、この男の正体はなんだろう…と疑う気持ちだけは、
大きくなっていった。
これはもう、行くしかない。
裕太は、ありったけの希望を握りしめ
慣れた様子で、穴をヒョイヒョイよけて、上を目指す…
時折、ステップに穴があいて、崩れて来ると…
そのたびごとに、「うわっ!」と声を上げて、手すりにつかまる。
まずいこと、引き受けちゃったなぁ~
崩れたら、どうしよう?」
不安気に、足は震える…
裕太の頭の中で、グルグルと、言葉がうずを巻いて、
回り続ける…
すると、階下から
「おい、大丈夫かぁ?」
男の声が聞こえて来た。
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