そうなると、余計に行きたい気持ちが勝って来るもの…
一度ついた火は、容易に消せないように、裕太もまた、
どうにかして、上がる方法はないものか…と、キョロキョロと
中を見回した。
子供というものは、おかしなもので、ムリだと思うと余計に、
ムキになるもの。
まぁ、大人だってそうですが…
ことに、冒険心の強い子供は、好奇心がからむと、何をしでかすか
わかりません。
立ち入り禁止と書いてあるのは、読んだものの…
「大丈夫、ちょっと見るだけ!」
ムリヤリそういうことにして、ようやく一歩足を踏み入れた。
少しヒンヤリとして、薄暗い空間を、足元を見ずにズンズン
進んで行く。
湿ったダンボールや、どこからか飛んできた、木の枝や、
裕太と同じように、入り込んで来たものが、残したと思われる
コーラの缶や、ポテトチップスの空き袋。
たばこの吸い殻などが、床に散らばっている。
それを頓着しないで、踏んでいき、ついに階段にまで近付いた。
階段は赤さびが前面を覆いつくし、強く持つと折れそうな雰囲気。
ところどころ、朽ちて崩れている箇所もある。
さすがの裕太も、それには触れないように気を付けて、階段に足を
慎重に乗せた。
手すりには、そっと触れるだけにとどめて、1段1段、ゆっくりと上がって行く。
時折、赤さびで、大きな穴があいているところもあるけれど、
そこをよけて行かないと、今にも崩れてしまいそうだ。
手すりを握ると、手が茶色く汚れるので、我慢して、極力触らないように
気を付けて上がって行った。
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