「で、どうするの?」
額を突き合わせるようにして、話し込んでいた善行は、すっかり肉屋の
オバサンのことを、忘れていたことに、はたと気付きました。
オバサンが詰め寄るようにして、聞いてきたので、つい弾みのように、
「わかった」
と言うと、オバサンはふいにニヤリと笑うと、戸口に向かって、
大きく手招きをしました。
やられた・・・
善行が思った時には、すでに姿を見せていた後で、今更
いやだ、とは言えない空気になっていました。
「たまたま、手が空いてる・・・と言うから、来てもらったわよ」
当然という顔をして、オバサンは招き入れています・・・
どこまでも強気で、自信満々な姿には、むしろ潔さまで感じて、
感心すらするくらいでした。
呆気にとられた、シニアオヤジーズの前に、
「おばちゃん、突然のことだから、品物は持って来れなかったよ」
大きな声がして、ノソリ・・・と部屋に入ってきました。
オバサンは、何を考えて、この人を連れて来たのか・・・
善行は、頭をひねります。
今までとは、少しタイプが違うというか・・・
今度はえらく、癖の強そうな中年の男性で、しかもひどく神経質そうな
目付きをしていました。
チラリ、と幸次郎を見ると、まったく同じように見返してくるので、
やはり気のせいではないのだな・・・と善行は思います。
「便利屋さんは、ここで間違いはないのかな?」
と、大きな声で言うので、思わず
「ここは便利屋じゃない。思い出のあるものを預かる、
預かり屋だ」
と、善行は即座に言い返しました。
にほんブログ村
人気ブログランキング