男は、善行の視線をたどり、人形の方を見ると・・・

「その人形は、トキコさんが、肌身離さず持っていたはず・・・」

と、記憶をたどるように、ゆっくりと話しました。

「それなら、話は簡単だ」

いつの間にか、幸次郎がタブレットを手でかざすと、

「その人形はどこにあるのですか?」

表情を明るくして聞きます。

「ぜひ、見せてください」

早くも、幸次郎は立ち上がろうとしました。

それを聞くと、善行もそれならばおばあさんの頼みが、すぐに

叶えられるかも・・・とわずかに期待しました。

すると男は静かに頭を振り、

「すまない・・・最近になって、この人形がどうしても欲しい、と言う人が

現れて、ゆずったばかりなんだ」

まさか、こういうことになるなんて・・・と、男は少し、申し訳なさそうな顔をしました。

 

「えっ?ないの?」

思わずよっちゃんが、素っ頓狂な声を出しました。

おまえ、ここにまだいたのか、とすっかり忘れていた善行です。

みんなもやっぱり、そうだったみたいで、男は驚いて、声の主を見ようと、

振り返りました。

よっちゃんと目が合うと、なぜだかよっちゃんは、恥ずかしそうに、頭をかきました。

「その人は、誰なんだ?」

咎めるように、善行が見ると、

「私は、よくは知らない・・・

メールでやり取りして、指定された住所に、送っただけだから」

男はひどくアッサルとした口調で、コップに口をつけました。

 

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