その用紙には、流れるような筆跡で、おばあさんの名前が書きこまれていました。
「ほらね!やっぱりそうだ」
男は、その名を見て、ニヤリとしました。
まるで、こうなることがわかっていたような、余裕の表情が見えました。
善行は、男の正面に回り込むと、
「お宅は、この人のどういう関係なのですか?」と聞くと、
男はおやおや・・・と、身を引くようにして、サングラスを外します。
それからサングラスのつるを、指でもてあそびながら、
「私は・・・彼女の知り合いです」
と、やっと決心がついたように、まっすぐに善行を目で見据えて言いました。
サングラスを外した顏は、思ったよりも年老いていて、目元にはしわがより、
目の下には、生活の不摂生からか、疲れたようなタルミが見られました。
パッと見、善行よりも、一回りくらい若そうなイメージですが、よくよく見ると、
若者というみずみずしさが抜け落ちていて、お世辞にもそういう年齢ではなさそうです。
善行はますます、怪しいとにらみつけ、
「失礼ですが、今のご職業は?」と聞きました。
すると男は少し、頭をかくと、つぶらな瞳で見上げて
「どんな風に見えますか?」と聞くので、困った顏をします。
「うーん。芸術家とか?」
適当な言葉が想いつかないで、適当に言ったところ、男は大きくうなづくようにしました。
