いつの間にか、シニアオヤジーズのメンバーは、この男を取り囲んで
立っていました。
男はグルリ・・・と首を回すと、後ろのオヤジたちを見やり、
「しょうがないなぁ~」と、困ったように苦笑いを浮かべました。
「私だって、詳しい内容は知らないんだよ・・・」と言うと、
「それなら直接、トキコさんに聞くのが、1番だろうに・・・」
と、ため息と共につぶやきました。
「トキコさん?」
善行が聞き返すと、男は呆れたような顔をして、
「あの人の名前も知らずに、預かったのか?」と聞くので・・・
善行はあわてて、引き出しから黒い手帳を取り出すと、パラパラとめくりました。
そして、おばあさんに書いてもらった預かり所を探しました。
ようやくページの後ろの方に、半分に折った状態で、挟まっているのを
見つけます。
そこには、預かった日付と、預かった品物、それから名前と住所と
電話番号が記入してありました。
そして、余白に善行の覚書として、
『品のいい 着物の似合う老女』と、書き込まれていました。
そのノートを見ていると、
「ほら、この人だろ?」
いつの間にか、男がニヤリと笑って、善行に話しかけました。
ちょっと、気分を害しかけたのですが・・・
「たしかに、そうだな」
認めざるを得ませんでした。
初めは、この風変わりな申し出をするくらいだから、
きっと偽名だろう・・・とオヤジたちの間では、暗黙の了解だったので、
まさか本名を書くとは、誰も思っていなかったのです。
だけどもこの男は、それがどうした?という平然とした様子だったので、
つい驚いて、この男は何者なんだ・・・と、善行も幸次郎も、警戒
したのでした。
