言いよどむケンタを、メアリーさんはにこやかに見ると、
「そのうち、きっとカイくんも、みんなのところに来ると思うわよ」
と言うと、ケンタはフーンと、疑わしそうにします。
先ほど、泣きべそをかいていたのが嘘のようで、ようやく笑顔に
なりました。
これには、メアリーさんもひと安心。
「さぁ、私達は、これからどうしましょうか?」
と、ニッコリとしました。
「海が見たい」と言うと、メアリーさんは、いつもよりも早く迎えに来てくれて、
2人で、電車に乗って、海辺の見える街まで、遠回りしてくれました。
「山が見たい」と言うと、メアリーさんの知り合いの八百屋のオジサンに頼んで、
車で迎えに来てもらい、山のふもとの川辺へと、連れて行ってくれました。
メアリーさんは、ケンタの願いを、なるべくかなえようと、工夫してくれました。
それでも、
「あの花園へ、連れて行って欲しい」と言うと、なぜか、
「まだ時期が早い」と言って、中々連れて行ってくれませんでした。
時には、タカシくんも誘って、一緒に近くの公園で遊ぶのを・・・
メアリーさんは微笑みながら、見つめていました。
そういう日は、タカシくんのお母さんに連絡して、
「あとで、送り届けます」と言うと、
タカシくんのお母さんはひどく安心したようで、かえって感謝されたりしました。
タカシくんのお母さんは、病気のお父さんの代わりに、遅くまで働いているので・・・
時折こうしてメアリーさんが、タカシくんと妹のサチエちゃんを預かってあげると、
その分、ゆっくり晩御飯の買い物ができる・・・と、嬉しそうにするのでした。