突然、受話器の向こうで、一瞬ためらうように、間が開いたあと・・・

颯太が意外なことを口にした。

「それが・・・用務員のオジサンが、急にいなくなったんだ・・・」

息をのむと、裕太は思わず「えっ?」と、言葉を失い、

「そうなの?」と、もう一度確かめるように、聞いた。

その声が、ほんの少し大きかったので・・・

隣の部屋で、ガタン、と何かが倒れる物音がした。

そうだ・・・母さんに聞こえちゃう・・・

裕太は、思わず、口をつぐんだ。

 

 以前裕太の住んでいた借家は、会社の借り上げていたもので、

それでも小さな庭付きの立派なものだった。

二階が子供部屋とベランダになっていて、ひとりっこの裕太は、

かなり広々と使っていた。

今は、じいちゃんの離れ、しかも平屋に住んでいるから、

前と違い、ふすまのしきり、というのもあり、音が漏れてしまうのだ。

もちろん、比べてはいけないのだが・・・子供の裕太にとっては、

それが不満で、前の家の方が断然よかったなぁ~と思ってしまうのだ。

こんな時、以前なら内緒の話をしていても、母さんに聞かれる心配は

なかったのに・・・と、言っても仕方のないことを、思わずにはいられない。

引っ越しの当初、母さんに、

「アパートを借りないの?」と聞いたけど、それは父さんが帰ってから・・・と、

アッサリと却下されてしまったのだ。

あの日に戻りたい。

颯太の家が、羨ましい・・・と、すでにホームシックのような状態に

陥っている裕太だったが、こればかりは仕方がない。

時折、母さんが何をしているのか・・・やたらと、パタパタと

スリッパの音が聞こえて来て、裕太は気を取り直して、例の件を

打ち明けようと、決心した。

 

 

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