「ケンタくん、こっちへおいでよ」
タカシくんの細い声が聞こえました。
それでもケンタの関心は、完全にその目新しい顏に、向けられていました。
初めは、さりげなく。それからジワジワと近付いて行き、じぃっと
その少年に目を向けると、ケンタの方を見ていた少年は、
目が合ったとたん、あわてて目をそらしました。
そっぽを向かれると・・・余計にケンタの中で、何かが芽生えたようで、
ますます気になるのです。
そらした目を、時折、チラッと向けてくると、ケンタはじぃっと見つめ、
ニンマリと笑います。
「こんにちは!ボク、ケンタ!」
ピョコンと、頭を下げると、その子はチラリ・・・とまた、ケンタに視線を
飛ばすけれど、なんにも言いません。
するとケンタは「あっ」という顔になり、大げさに顔に手をやると
「ごめん!もしかして、お耳が聞こえないのかな?」
と、今度は大きく口を動かすと・・・少年は、顏をしかめて、背中を向けました。
たまりかねて、タカシくんがケンタの側に来ると、
「コイツ・・・耳は聞こえるよ。だけど、ムシするんだ」
と、チラリ・・・と少年の方を見て、ケンタの手を今度こそ思いっきり力をこめて、
引っ張りました。
思わず、ケンタの体が横に倒れ込む勢いで。
