それは、とんでもない光景でした。
ショータが杖を蹴るのと、メアリーさんがそれを杖で払いのけるのとが、
ほぼ同時で・・・コンマ1の差くらいで、素早く動いているのが、
見て取れました。
ケンタは、ポカンとして、何が起きたのか、わかりませんでした。
だけども、網膜に映し出された光景は、おそらく本物であろうと・・・
まるで、スローモーションで再生してみたい、と誰もが思ったのです。
メアリーさんが、杖を持ち換えて、時代劇のおさむらいさんのように、
その足を振り払うと、そのまま、ショータの足をすくうように動かします。
それと同時に、ショータを止めに入ろうとする先生の目前で、
フワッとショータの体が、浮き上がったのです!
まるで、魚が飛び跳ねるように、宙に浮くのを見ると、
思わずケンタは、
「かっけ~!」と、声を上げました。
先生は、メアリーさんに、駆け寄り、
ケンタは、ポーッとして、その様を見とれています。
「えっ?えっ?」
ショータは、自分の身に、何が起きたのか、理解できないようです。
まさか、あのオバサンが、あんな鮮やかな身のこなしをするとは、
誰にも想像できなかったようで・・・
ショータは、手をバタバタとさせます。
メアリーさんは、振り払った杖をフワッと返すようにすると、
目にも止まらぬ速さでよけます。
小さな男の子は、小さな放物線を描いて、宙に舞うようにして、
一瞬止まったかのように見えました。
それからゆっくりと、空から落ちてくるところを、
メアリーさんは、手を広げて、受け止めるのが見えました。
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