「別に強制はしないんですけどね。
万が一、盗難とか、何か厄介なことになってはいけないから・・・
一応、お名前と住所と電話番号と、何か身分を証明するようなものを、
見せてもらうことにしているのです」
と言うと、老女は、ためらった顔をして、立ちすくみました。
善行は、その様子を、おや?と思って、見つめます。
とても噓をついてるようには見えないし、なんら問題がないと思っていたから・・・
困ったなぁ、とつぶやいて、
「その人形、あなたのものですよね?」
と、一応、念押しのつもりで聞くと、老女は少し曖昧な顔になり、
「もともとは、別の人のものだったのです」と言います。
「でも、今の所有者は、あなたですよね?」
さすがにここは、ハッキリとさせねば・・・と、善行が食い下がると、
老女はいぶしぶといった体で、うなづいて、
「わかりました。私が預かっているものですが、それでも、
私の名前でいいんですか?」と聞くので、
「もちろん」と善行は答え、少し考えたあと、
「持ち主の許可をとっていただければ」と言い、
「持ってきた人の名前で、記入してください」と言いました。
要は、犯罪に用いられてはいない、ということと、持ち主の同意があるかどうかと、
手続き上の問題なのだ、と善行は思います。
ひとまず預かって、あの出窓のところにでも、飾っておけば、
尋ね人が見つからなくても、問題はない、
そんな大らかな気持ちになったのです。
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