楽しい時間というものは、あっという間に過ぎるもの・・・

おじいちゃんと楽しく遊んだ日々も、

偶然知り合った、お兄ちゃん達と宝探ししたことも、

すべてがうそのように、過ぎ去って、あれは、夢だったの?

ケンタはしばらく、ボゥっとしていました。

あんなに長くて待ち遠しかった、母さんのお迎えも、

今や、まだ先でもよかったくらい!

思わず「なんでもう来たの?」なんて言いそうになったのです。

 

 おばあちゃんの気掛かりは、母さんが一人でやっていけるか、

ということ。

ケンタの父さんは、もっと小さい頃に、お空の雲になってしまったので・・・

今回のように、仕事が忙しい時に、ケンタのことをどうするのか、

と心配していたのです。

案の定、ケンタは「かえりたくないよぉ」とダダをこねました。

普段は、機嫌よく遊んでいるケンタですが、

おじいちゃんと別れたくなかったのです。

「やっぱり、止めようか?」

おじいちゃんが言うと、ケンタは涙でぬれた目で、母さんを見上げました。

一瞬、ぐっときたようでしたが、

「それはムリよ」

キッパリと、母さんは言いました。

「やだやだやだ!」

大きな声で、泣くケンタに、

「どうしたの、まるで大きな赤ちゃんみたい」

母さんは少し、呆れます。

そして、おじいちゃんに甘やかされて、甘えん坊になったのでは・・・

と、おじいちゃん、おばあちゃんを見ました。

「また、遊びにおいで」

困り果てたおじいちゃんは、優しくケンタをなだめました。

 

ケンタはもちろん、わかっているのです。

母さんが来たら、お家に帰る、ということを。

それなのに、宝探しが終わるまでは・・・と、母さんはギリギリまで、

ここにいさせてくれたのです。

子供には、そういった思惑はわからないけれど、

今さらどうにもならないということ、

幾ら泣いても、いつか帰らなければいけないことは・・・

それでも、泣かずにはいられませんでした。

すると母さんはため息をついて、

「保育園が待ってるんだよ。

友達にも、会えるんだよ」と、少し困った顏で言うと、

おばあちゃんが優しく、

「もう少しだけ、ケンタを預かることは、できないかねぇ」

と、いつもはおとなしいおばあちゃんが、口をはさんだのでした・・・

 

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