すると子供たちは、ワッと囃し立て
「ゼンコーさん、励まされてらぁ~!」
と、1番落ち着きのないリョータが、こまっしゃくれた顔で言ったので、
善行はついに、カチン・・・と、堪忍袋の緒が切れる音が聞こえました。
「おまえら・・・いい加減にしないと、あと30回書かせるぞ」
と、脅かすように目をむきました。
するとまた、蜂の巣をつついたような騒ぎになり、手の付けられない
状態に・・・
しばし、教室は興奮のるつぼになるし、せっかくのおじいさんが
来た・・・というのに、いいところを一つも見せられずじまいで。
救いだったのは、おじいさんが、子供たちを見て、
とても明るい表情で帰ったことくらいでした。
それから、物は試し・・・とばかりに、宿題を持っておいで・・・
と、トシオが言ったのは、それから数日後。
まずは、上の学年の子供たちが、ランドセルのまま、教室に
現れました。聞くと、部活で遅くなったから、そのまま来た・・・という
話でした。
商店街を駆け抜けたのが見えたのか、肉屋のオバサンが、
「お腹が空いただろ」と、揚げたてのコロッケを、差し入れに、持ってきて
くれたのでした。
ランドセルを、教室の隅に放り投げて、早速宿題に取り掛かっていると、
揚げたてのいい匂いをさせて、オバサンは、教室をのぞきました。
誰かのお腹が、ぐぅ~となって、するとたまらずに、子供たちは一斉に
オバサンを取り囲みました。
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