そうして2人は、もくもくと、座布団を片づけたり、机をふいて
回ったり、ゴミを集めたりしました。
「なぁ、覚えてるか?」
よっちゃんは、手を止めて、善行を見ました。
善行は、乱雑に積み重ねられた、習字のお手本を、きちんと
所定の位置に戻すと、今度は、すずりや筆を洗おうと、手に取りながら
「なんだ?」
と、下を向いたまま、聞きました。
「ここのおじいさん、結構、厳しかったな」
よっちゃんの言葉に、善行はつられて思い出そうとします。
たしか・・・
いつも、シャンと背筋を伸ばして、キビキビした人でした。
声も、よくとおる声をしていて、よそ見をしていると、
「そこ、何してる!」
と、どなられたものです。
おばあさんは、優しくて、買い物帰りに、勝手口に入る姿が、チラリと見えると、
「いらっしゃい」
と、いつもにこやかに、声をかけてくれました。
時折、みんなの分も、麦茶を入れてくれたり、おせんべいを差し入れしてくれたり、
それを目当てに、通ってる子もいました。
「あのおばあさん、どうしてるかな?」
と善行が聞くと、
「確か、亡くなった・・と聞いているよ」
と、商店街の情報通と、奥さんが仲がいい、よっちゃんが言いました。
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