カメさんは、にこやかに微笑むと、

「どう思うも、こう思うも・・・単純に、本当のことを

言ってるんじゃないか?」

と、あまりにも素直に答えたので、善行は、少し拍子抜けしました。

「じゃあ、本人は、なんの下心がないってこと?」

と、さらに、善行は聞きました。

すると、カメさんはあっさりと、

「そうなんじゃないか?・・・ボクは、よくわかんないけれど」

と言うと、

「ま、もっとも、ゼンコーさんが、なんと言って欲しいかは、わからないけどね」

と、付け加えるのを、忘れませんでした。

微妙な空気を察知して、善行はチラッとカメさんをのぞき見ると、

「じゃあ、信用しても、いいってこと?」と聞くと、

「それは、本人次第なんじゃないか?」

脇から、幸次郎が、ふいに答えました。

 

 それから、カメさんは黙ってうなづくと、カウンターの中に引っ込みます。

いつの間にか、奥さんが料理をしているようでした。

フライパンを、手慣れた調子で振っていて、香ばしい香りが食欲を、そそりました。

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