「我が家は転勤族で、もうしょっちゅう引っ越して・・・
この教室に通ってたのは、ほんの2年くらいでしたが、おじいさんは、
ボクに優しくしてくれました。
その時に、『大きくなったら、この教室を、継いでくれるか?』って
冗談まじりで、言ってくれたんです」
若い男は、懐かしそうに話しました。
と言っても・・・j実際のところは、誰も後を継ぐ者はいなかったけれど・・・
善行は、「おや?」と言う顔をしました。
「おじいさんは、息子がいるのに、どうして、君なんだ?」と聞きます。
すると、男はニッコリして・・・
「息子さんは、習字には、まったく興味がなくて・・・ろくに、よりつかなかったそうです」
そして男は、ゆっくりと息を吐き出すように、静かに話ました。
「おじいさんはよくいってました。
あいつは、この習字教室のことが、きらいなんだ・・・
"前時代的な”とか"過去の遺物”とか時代に取り残されている・・・
今の時代に、そんなもの、なんの意味をなさないって・・・」
と言うと、
「そんなこと、ないのにな」
善行は、少し憤りをみせました。
