「私は、その手紙をまだ、見ていないのですが…」
 先生は、遠慮がちに言うと、なんで?という顔で、刑事さん達は、岸本先生を見た。
先生は、言い訳のように
「だって…影を追いかけていたし…職員室
 に、電話がかかっているし、それどころでなくて…」
と、急に気後れがして、尻すぼみになる。
すると、
「あんた、見てないのか?」
と、怒鳴るように言い、
黙っていると、わざとらしくため息をつき、
「じゃあ、なんにも知らんのだな?」
と言うので、
「ええ…まぁ…」と、若干引き気味に、声を発した。
学年主任が、これみよがしに、ため息を
つくのが聞こえてきた。

 大切な証拠物件だからと、渋る刑事さんを説き伏せるようにして、先生は、どうにか見せてもらった。
仏頂面の年配の刑事さんは、手袋をはめ…
(もう、手遅れだとは思うが…)
その紙片を広げてみせた。
息を呑んで、一同は、その様を見守っている。
特に、学年主任は、自分のミスで、足を引っ張っているせいもあり、身を乗り出して、のぞき込んだ。

 それは、拳大の石ころに、くるんでいた紙で、ところどころ、破れかけており、
何かのシミもついていた。
それを、慎重に、しわくちゃだらけの紙片を広げていった。


日本ブログ村