ストレッチ中心のリハビリを終え、アカリは、一人、車椅子に乗っていました。
まだ、全体重をかけられないので、中々
難しいのです。
体重計に片足ずつ乗せて、
これくらいの荷重で、なんてやらされますが、そんな器用なことは、難しいのです。
 肩はパンパン。
 腰も重だるく、足は筋肉痛。
 最近まで、ベッドで安静にしてたので、足の筋肉は、すっかり落ちてしまいました。ペッタンコな、足です。
「あ~、こんなんで、ホントに、歩けるようになるのかな?」
 すっかり弱気の、アカリです。
 車椅子には、すっかり慣れたのですがね。
 ボンヤリしつつ、一人で、渡り廊下を通っていました。
すると、
「あ、こんにちわ!」
 前からスレ違い様、声をかけられました。突然だったので、誰なのか、検討もつきません。グルリと、車椅子を回して、背後を見てみました。
「どうしたのよ~、えらい、元気がないけど」
 声がした方向を見ると、先日、話しかけてきた、男の子だったことが、わかりました。
 男の子は、ぱっと見、患者さんなのか、ただのお見舞い客なのか、区別がつきません。
 アカリは、ちらっと見ると、
「どうも」
と、口の中でつぶやりながら、通り過ぎようとしました。
《触らぬたたりなし》
 そう、つぶやいて。
あわてて、その場を離れようかと思えば、
ヘラヘラと、笑いながら、近づいてきました。
 なん、この人。
 アカリは、気味悪がって、近づいたりはしません。だけど、男の子の方が、ニコニコしながら、近付いてきます。
「アカリチャン、だよね?」
 なぜか、名前を知ってるようです。
 アカリは、ますます、気味悪がって、後退りします。
「な、なんで、知ってんの?」
 怯えるアカリに、
「覚えてないの?ショックだなぁ」
 なんて、ふざけてるんだか、ふざけてないんだか、わからない口調で、男の子は、言いました。
「あなた、だれ?」
 ついにアカリは、しびれを切らして、問い詰めました。
「あなたは、私と、なんの関わりが、あるの?」
 アカリの問に、
「なんの関わり?んー、あるような、ないような…」
 と、からかう口調なので、アカリも、イラッとし、
「関係ないのね?じゃ、それで」
 と、言うと、車椅子をグルリと回転させ、男の子の前を、通り過ぎました。
 あ!
 男の子の、慌てた声が、追いかけてきました。
「ちょっと待ってよ!ボクはずっと、君に会うのを、楽しみにしてたのに」
 アカリは、無視して、前に進みます。
「ボクたち、昔、会ったこと、あるんだよ」
 アカリは、車椅子を動かす手を止め、ゆっくりと、振り向きました。