NEC杯は忙しくて行けず、お誘いいただいた横浜IMPペアだけ参加してきた。バレンタインデーの前日である。

成績は中位入賞と、フィールドに比して悪くない成績だった。ボードを一つご紹介。


オポーネントはNorthがNECで来日したインドのプロ、Southが女性。英語を流暢に話す女性はブリッジ界では珍しくもないが、こちらの二人は英語と耳慣れない言語でコミュニケーションしていた。

僕はこんなハンド。

AJ
J9
A9875
6432

オークションは左手からオポーネントのフリーランで

1H-1S;3H-3S;4S//

Plan the opening lead.

僕はディフェンスサイドに殆ど点数がないと考え、DAとSAと、パートナーにH1アナーを期待し、SJをアッパーカットの形で勝って落とすつもりでHJをリード。これはビッドが終わってほぼノータイムで選択した。

出てきたダミーはこんな感じ。

93
AKQ852
J3
AQ3

良いハート。
インドのプロはHJをAで勝ってS3,6,K,A。アッパーカットの目はなくなった。どうするか。

もしディクレアラーがH1枚でCKが無ければ、Cを出せば落ちそうだ。Cxを引いたらDで2勝のチャンス、CA勝って、HKQでマイナー二枚捨ててもディクレアラーのトリックはS6個とH2個、CAで9個。足りていない。

ではディクレアラーのHが2枚なら?僕には虎の子のH9がいる。ディクレアラー目線で僕のHJリードをシングルトンと考えてくれると、ダミーにサイドエントリーが無ければ、例えディクレアラーにHTxがあったとしてもHは3つしかとれない。ディクレアラーがSKQTxxxxやもう一枚Sが短いとすればS5勝もあり得る。とすると、Cシフトを受けなければ悠々とHをエスタブリッシュしてmを消せたが、いまCを出されると困る。CK裏に期待してH4枚目とCKスクイズはポジションに無いので効かない、とすれば10勝確保にCKを表に期待してフィネスするのが分が良い、ということになるかもしれない。

ディクレアラーがD3枚で、ディフェンスでD3発出すとダミーでDを切る羽目になり、ダミー張り付きからの、僕のSJかパートナーのCKが勝つというディフェンスプランも有るが、僕がD五枚持っているのでこれは少し望み薄。だいたいこの辺まで15-20秒考えてC3。ディクレアラーは長考を始める。

インドのプロが考えているのはいい兆候だ。ディクレアラーがCK持ってる時は考えなくていいはず。CKを持っていなくて、かつ考え込むような状況であれば、CKフィネスの方が分が良いという結論になりそうだ。加えて、意図したことでは無いが、僕が少し費やした時間が、CK手出しのリスクについて考えた時間に見えているかもしれない。そしてオープニングリード。CAが正解の時の僕の手はCボロしかなくて、HJの複数枚である。そういうハンドよりもCKを持っててHJシングルトンの方がより多そうでは無いか。

ワクワクしながら待っていると

"CA!"

あっ。SQを取って、Hを出すとボスフォロー。

Northは言った、"That's the story."

Hでダイヤを全て消して6メイク。フルハンドは以下。

{60641A52-69E7-480E-98C8-66CA7DC3E487:01}


どっちのプレイが優れているかというと、どうやらCAらしい。大雑把な計算だけど、CQは、CKが表にいればハンドのCJ勝ち、CQも勝ってCAでDを消すとS3-1ですらメイクするのでメイクチャンス50%。一方CAはS2-2しかメイクしないので50%切るように思えるがS4-0が否定されるので50%より少しよくなる。4-0ブレイクが9.6%、3-1ブレイクが40.7%、2-2ブレイクが47.7%なので、

47.7/(40.7+47.7)=52.8%

となるようだ。

そもそもだけど、CK振り込みが有るとしたらオポーネントの失着なので、シンプルなfishing playに思える。もともとS2-2しかメイクしていない所にできたエクストラチャンスは、注意が必要だということだろう。

「Cリードなら落ちてましたね」

パートナーの指摘が耳に痛かった。

ラウンド終了後オポーネントと会話してみると、どうやら彼らはベンガル語で会話していたらしい。女性から、これから重要な言語になると思いますよ、と言われ、中国語位しか話題にならないアジアンとしては少しハッとした思いになりました。
ブリッジは運の要素をなるべく排除して競技化したというところが素晴らしい。
しかしながら、運やツキというのは明らかに存在する。そう思う。
麻雀やポーカーと比較するとはるかに早いスピードでスコアは実力に収束していくが、1ボード1ボードを見ればやっぱり当てものは存在するし、僕は1週間のトーナメントですらそうだと思っている。
さて一方、強運の星の下に生まれた、という人がいる。N君はどちらかというとそういう人で、そして自分でもそう思っている。僕はそんな性格を好ましく思っているが、しかしながら、この日は彼にとって良い日ではなかったようだ。

{EDC510B4-0A4F-4859-97B4-01BA9ED73FA8:01}



オークションはEastのN君から、ウィーク2スペードがオールパス。HリードをHA勝ち、C4。
CA、C6をC9勝ち。SxをSA勝ってCリターンをNがラフ。SバックをSQ、SJと狩り集めてD9,3,?

ここでDKをコールしたので-1。Southのシェイプは2344か2434に決まって、SA、CAJが見えているので、DAが居たらテイクアウトダブルするかもしれないのだが、しないかもしれない。十分外しうるでしょう。

3トリック目にSを出すことに全く違和感は無いが、いきなりダイヤを出せば、もしSouthがDAを持ってるならば、Cを切るためにすぐ出してくれそうではある。Cが短いのが右手で、どうせSAで負けた時にC切られるならその方が良かったかもしれない。

これはどうだろう。

{CFF30FAC-142A-421F-ACD6-18F646C5A06F:01}



僕はSouth、オークションはEから

1C P 3C* P; P X P 3S//
*PRE

ブリッジにおいては、考えを変えると大体ろくなことにならない。1Cにはテイクアウトできなくて3Cにできるというのは行動にいかにも矛盾をきたしているように見える。実際にそうかもしれないし、でもテーブルではこれが正しいとおもったのだ。1Cに対してはテイクアウトするバリューが無いように見えるが、3Cが回って来た時は、もしパートナーが1NTオープン程度のバリューを持っていたとしても、C3枚も持っていたら普通アクション取れないわけで、ゲームルーズしそうだと思ったのだ。

こういうアクションが長い目でみて良いか悪いかはちょっとわからないが、このボードに関しては厳しすぎる4Sに突っ込むことなく穏当な3Sに落ち着いた。裏は4S-1。

リードはCx。CA勝ち、SJ流し。SQ勝ち、HKを取るとWestはH8、Sxリターン。S集めてDをQでフィネス。これは抜けてCx。ダミーでラフ。HT流すとHがちゃんとエスタってジャストメイク。

Sをフィネる向きが若干怪しい。HAKラフで-1になるところであった。

オポーネントのHKをとったときのシグナルだが、リバースであってもHJを出したら迷いは無い。とはいえHAKが存在するとは考えにくい(リードしてそう)なので、HKQからのHKだとすると、HJは出すに出せないかも。やっぱりOLでHKとって見て、H8がでてきたところに、Eastが悶絶するのが適当かなぁとは少し思う。

さて一番熱かったのがこのボード。そしてQは当たらない。

{B8FFF3A0-EBB4-4593-937F-0F5EAC31E68C:01}



オークションは私たちEWのフリーラン。僕がWで

1D-1S;2H-3D;3S-3NT;4S//

リードはC3。Aで勝ってSロー→SJ。Qに抜けてC。Sxで勝つもハンドエントリーがない。DローをQで勝ち、Dバック。SA、ST。STでバッドブレイクを確認。D出すとSouthに切られ、Cを取られてSも取られるので-2。

「3NT言われたらそこでやめないんですか?」

「4Sか5Dの方が良いハンドが多いと思った。それにハンド次第でスラムがありそう。」

冷静になってみると、トランプコントラクトははともかく、3NTいったひとにむかってはスラムは厳しいだろう。今日はCの形が好ましいのでなにやってもメイクするし、よく無いジャッジに見える。4Sは余力も示すだろうから、普通もう数点必要風。

一方、トランプコントラクトはそこそこ魅力的だ。やるやらないは置いといても6Dはメイクし得るし、5Dはクロスラフに向かえば楽勝。もう少しいい6Dの時も、3NTパスしては逃してしまうかもしれない。僕の手が3451と分かれば、1ストッパーの3NTは厳しいとEastが判断して3Sに4Sビッドしちゃうのがあり線かもしれない。

4Sは、いろいろ考えたけどオポーネントにテンポを与えると厳しいものがあるので、やっぱり最低でもSQの向きは当てないとダウン模様だ。でもSQ当たる時は6Dができそうなので、そんなことなら3NTをパスしたら良かったかな。

兎にも角にも、この日はとても楽しくブリッジができたのである。
2/22にもう一度試合をするので楽しみだ。

更新までの時間が空いてしまった。最近少し忙しいけれど、幾つかのブリッジストックを近々消費したいと思っています。

PS.以前の記事のコンパウンドスクイズもどきは、本当にもどきだったようだ。メナスがダミーにありすぎて、最初にダミーが絞られちゃうらしい。pくんご指摘ありがとう。
番外編、ウィークオープン。僕もN君に負けず劣らず陽気なので、話の種には事欠かない。

まずは一つ目。LoTTではない、LooT。

僕の手は

982
AT84
8
AQT82

オークションはパートナーから

1S X XX 2H; P P X P; 3D P 4S//

OLはHQ。ディクレアラーの手はちょっと弱めで

J7643
2
AKQ63
63

二つの手を見比べると、どうにも貧相だ。陽気な二人がいると、20点でゲームにいっちゃうらしい。

OLはHQ。HAで勝って、眠かった僕はそこから数トリック分、記憶が飛ぶ。STのフィネスが抜けてHを一回パンプされて、もう一回Sを負けにいったところでDが返ってきて、なんか最後Cのダブルフィネスからのスローインになってダミー目にも美しくメイクしたところだけは覚えている、ってなんじゃそりゃ。

フルハンドはこんな感じ。

{CD794179-139D-429B-B4AB-55083AC40A65:01}


以下、酔っ払いの会話。

「これH2回パンプされたら落ちてない?」
「いやー全然できないっすよ。なんだったんでしょうねこれ」
「HA勝って、まず何した?」
「Dを一発切りました。」
「でS9流してT勝ち、Hでパンプされて、もっかいS負けにいったじゃん。SK勝つよね。…Cのスローインでメイクした記憶あるけど、Eastってダイヤ持ってないから、H出すしか無いやん」
「あれそれはダウンですねぇ」

馬場のHUBで、ハンドレコードとにらめっこする二人。

ズブロッカを一口飲んで僕、気づく。

「S2回目負けた時、WのQ勝たなかったっけ?」

そう、実はLead out of Turnが有ったらしい。

おそらく実際に有った流れは、HAで勝ってDA、Dラフ。S9を流すと9,5,3,T。HJリターン、ロー、ロー、ラフ。S6を出すとK,8,Q。がここでQ持ちがリードアウトオブターンで、HTに向かって打ち込むのを嫌がりDリターン。この間オポーネントは終始無言。DKで勝つとディクレアラーの左手がHピッチ。DQも勝って左手もう一度Hピッチ。Cx、x、T。勝った!ダミーのHを切ろうとすると左手にオーバーラフされるも、CKJしかもっていない。CJリターンをQでフィネってジャストメイク。

「なんでSQ勝った時なんも言わなかった笑」

「だって関係無いですもん、負けたSがKだろうとQだろうと。」

ウィークオープンからの、ウィークゲームビッドからの、リードアウトオブターンによる美しいエンディングだったようだ。

ところでこのコントラクト、HQリードから始まると、Hパンプx2じゃ落ちない。例えばS2回目負けにいった時SK、SAをキャッシュしてHをだす直前のフルハンドはこんな感じ。ここから残り全勝する。

          J
          -
          KQx
          xx
-                     -
K7                 95
JT7                -
x                    KJ9x
          -
          T8
          -
          AQTx

H5,8,K,SJ、DKQとってCをフィネスしてHTを取ればメイク。このコントラクトを落とすにはEastからSxリードして、Sをいきなり狩りあげちゃう必要が有るようだ。

ではH5リードなら?その時はCをフィネってクロスラフしよう。トランプに一切触らず、赤いスートを適当に出し続けるとメイクするようだ。もちろんHQリードの時もそんな感じ。

神の目を持っているならともかくこのEastからSxをリードできる人間はいないので、陽気なビッダーズペアの勝利。いいコントラクトでした。

もうひとつ。こちらはそんなウィークでも無いのだけど。

{A7E55B4F-FCB7-443A-9DCD-B79E773EDBEB:01}

僕はSouth、オークションは僕から

P P 1D 1H; 1NT P 2C//

でたくさんメイク。オポーネントには4Sが。

もし平凡に1Cから始まると

P P 1C 1H; 2C X P 2S;P 

みたく進んで4Sになってしまうかもしれない。が、実際のオークションみたく進むとSフィットが見つからないのもさもありなんという感じ。

ちなみに裏は1Cでオープンし、Sフィットは見つかったものの3Sでやめてしまったようだ。まぁこれもこれで難しい。

次でこのシリーズもラストだ。