この日は大変だった。朝から剣道部の試合の応援で日本武道館へ来ていた。自分が固めの運動部に入るようなきちっとした人間じゃないから、しんどいことも多い。
運動部は特に下級生の間、自分が出ない試合も応援に行くことになってる。この試合は重要な試合だから、スーツで応援なのだ。
これが近場の試合ならいいのだけど、スーツで行くような大きな試合はだいたい都内開催。
8時台後半開始の大会に間に合うよう高崎駅を5時すぎ発の電車に乗る必要があり、それには前橋を4時半に出なくちゃいけなくて、結局起床は朝4時。
部自体は1回戦を勝ち抜いて2回戦負け。1回戦負けもよくある事なのでこれは御の字の結果。
こうして午後が暇になったので、インカレへいって遊んでもらうことにした。Pdはたまたまツモれた陽気なN君。
混ぜてもらったのは、サイドゲームのチーム戦。1位を追っかける2位でVPは少し離れている。試合は中盤なので無理しすぎる必要はない。紹介するハンドはシングルダミーで、下が僕。
xxx
T876
J9
Kxxx
KJ
AQJ9xx
KT8x
A
オークションは僕から
1H-2H;4H//
OLはCx。A勝ってさあどうしよう。
ダイヤを手出しで2回負けて、たぶん1回右手に入ってスペードリターンが来るからそれを当てて、3回目のダイヤをダミーで切ってハートをフィネるプランと、HA、Hxと出していつか何とかダミーへ渡り、ダイヤとスペードをなんとかするプラン。HKグルトンがいうる分、後者がよさそうかしら。
…ここで脳裏をよぎるハンドがあった。あれは確か2011年のクロアチア、本戦後のBAMで僕はこんなハンドを持っていた。Both Vul.の4th seat。
xxx
KQx
Qxx
Kxxx
オークションは左手から
1D 2S 3H ?
この頃現在より神経質だった僕は、BAMということもあって、長いヘジテーションのあと3Sと置いたのだ。このヘジテーションは右手のフランス人スクリーンメイトにしか伝わっておらず、また、ハンドはきちんと持っていた。
オークションは
1D 2S 3H 3S;
4H//
と終わり、Sxリード。ダミーは
KT
JT9x
A9xx
Axx
ダミーはST、pdはSJ、ディクレアラーはハンドのAで勝って即スモールハート。また長考する羽目に陥ってしまった。果たしてpdの
QJxxxx
A
xxx
xxx
はあり得るだろうか。
pdはハート1枚以下で、点もない。確率的にHAをシングルトンで持っていることはあんまりない。それでも僕は、HAxxxxの人がスペードリードを手で勝って即ハートスモールを出せる人間がいることを想定できず、ローをフォローした。ディクレアラーのハンドは
Ax
A8xxx
KJx
QJx
で、ハートを一敗に抑えられたため、ジャストメイクされてしまったのだ。ディクレアラーは僕のハンドを見ずしてヘジテーションの理由を正確に理解し、勝負を仕掛けたのであった。
…意識は代々木のオリセンにもどる。
一度、手からHxを出してダミーにわたり、CKでスペード消してダイヤを当てるプランについて真剣に考えてみよう。
僕は夢を見ているのだろうか。
確かに手からHxを出すプレイは、どこかにHKグルトンがいたらアホみたいだけど、左右どちらかがKグルトンを持っているパターン数は左手がKxを持ってるパターン数と等しいことに気づく。
もし僕がAQJxxxからxを出していることを左手に100%察知されないならば、ハートを無敗にするプレイとしてはHAを出すプレイと等価だ。
加えてHKxxが左手に居れば、普通HAとぶつかるのが怖すぎてHKは出せないはずだ。これもHTでオーバーテイクして、CKでSxを消せばダイヤ当てるだけでメイク。
うーん。ものすごくいいかは微妙だけど、そんな悪くもない気がする。裏もゲーム行きそうでスイングがほしいし、出してみるか。
T1:Cx,x,x,A
T2:H9,K,x,x
左手即HKをプレイ。HKグルトンだったか、失敗した。とおもったら、T3に左手はちょっと考えてHx。
僕のハートホールディング、見破られてるじゃん。でもハートリターンはラッキー。
これをダミーで勝って、CKでスペードJをピッチ。DJを出すと右手はDx。
悩みどころだ、ここを当てればメイク。
右手は下級生だからDQを持ってたらDJにかぶせてくれそうな気もしたが、それ以上に、左手がダイヤを2回リードしなかった理由がDAを持っているためだと判断して、DJを流すと左手DQが勝ち。SADAと負けて-1であった。DAは右手だったから、DKを引けばメイクしていた。
4Hのディフェンスを左手目線で考えてみよう。シェイプ適当だけどアナーの配置は
AQxx
Kx
Qxx
xxxx
な感じなので、T2でハート出されたとき必ず落とすためには、T2でHK上がってダイヤシフト、スペードバックとしなくてはいけない。
T2でHxを出すプレイのいいところは、この配置の時右手からシグナルが出せないので、仮に必ず落ちる形があったとして正しくディフェンスできるとは限らないところだ。万が一(?)、ハートホールディングを察知されても、なおエッジが残っているように見える。
あとDのゲスをどうするのが正しいかであるが、これは悩ましい。
テーブルで考えた通り、左手にDAがいなかったらどこかの段階で出してそうなことと、実際のハンドパターンは落ちてるから、ケアしなくていい考えからDQオンサイドと読むのはそれなりに理屈がある。
一方で、HK勝った後、左手は返すものをちょっと悩んでいた事にも注目したい。
その悩みは、ダイヤを出していいかの悩みだったのでは?
もう一つ、左手にSAHKDAは同居しない(T/O doubleがかかりそう)ので、おそらくSAとDAのどちらか+HKなのだが、もし彼がSAを持っていないなら、相手に長くて良いミドルがある関係上、二回のリードチャンスの中で一回はスペードが出て来てもおかしくないのでは…?
このセッションはこのボードでパーシャル負けしたが、全体としては勝っていた。左手の彼に聞いてみた。
「なんでHK上がったの、HAとぶつかるの怖くなかった?」
「CA勝って長考があったから、HAはdaisukeさんかと」
…このコメントはすこしあやしい。
まずT3でのちょっとしたヘジテーションは、HKが勝ったことを処理している時間に見える。
そして何より、僕のレアプレイを理解している人は、僕にダミーエントリーがなく、またダイヤが二敗する可能性がある(=DAがない)ことに気づくだろうから、DAでPdへ渡ってスペードを返すディフェンスを自然と思いつくはずだ。
多分、大体大丈夫やろ、くらいの軽い気持ちでHKを出したのだろう。
HKをいきなりアップする人にとってダイヤモンドシフトが自然であるとすれば、右手のダイヤへのシグナルなどいらないということ。これは左手のハンドを持った人にとって、とても怖い話である。ハートのホールディングを察知した人に対してエッジなど無かったのだ。そして左手はHKが生還した幸運に感謝し、ダイヤに変わるべきだった。
さてプレイの改善点について、ほかの人と話してみた。
案1
「長考しなければよかったのでは」
こんなプレイしたことないから、今の僕には無理だった。これで本当に構わないのか、勘定に時間がかかった。一度意識はクロアチアに飛んでるし、
案2
「H9でなくHQを出した方が、HKを上がりにくかったのでは」
ダミーに入ってCKでSJを捨てればダイヤ1敗でメイクだから、なんとかダミーに入りたい。このプレイはHKxからxを出す確実性を上げるというなんとも不思議なもの得るために、左手のHKxxを犠牲にしている
案3
「T2の長考でハートの持ち方がバレたんだったら、ダミーからCKを引いて、あ、ごめんごめんと流せば、なにかほかの長考と見せられたのでは」
右手の一年生がクラブフォローしたら、そのままSJ捨てるんでしょう?裏から盗むのはワルいやつ、表から盗むのはズルいやつ。