1ページ物語:エピソード5 ジャンル:SF | 清静放下

清静放下

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ランダムキーワード:十五夜 滝壺 王 SF




一般市民の乗り物が宙を飛び交い

食物を得る為の田畑や養殖場も必要としない

科学万能のこの時代に


そんな風に、サトルは思う


古より、龍が住むという


密林の奥にある滝壺
 

そこに向かう軍用飛行機の中で


サトルはこう考える


何が古代龍だ

そんなものが居れば

常日頃から作動している

衛星で

レーダーで

見付からない訳がない

馬鹿げている

しかし、これは国王直々の命令


断る訳にはいかなかった







遠い昔

その国の科学水準が低い頃

人々は科学は自然を支配していると思っていた

しかし

科学の発達に従って、科学者達は自然の奥深さと偉大さを否応なしに理解せざるをえなかった

科学とは、元々あった『それ』を理解しようとする選択肢の一つに他ならない

素粒子間の働きにおける発見により、天才と呼ばれたある科学者はそう言った

科学はあらゆる面において、よりコンパクトで、より高性能なモデルを実現させ

偉大なる自然は敬意を以って可能な限り、自然のままに残された

国により、立入禁止区域に指定された場所も多い

そうやって数万年は人の手が入らなかった密林の奥に

大瀑布がある

龍はそこにいる。らしい

しかし、衛生から見る限り、そんなものは影も形もない

流れる川を泳ぐ小魚まで映せるのだ


いれば見付からない訳がない


再びサトルはそう思った

しかし、気になる点が一つだけある

滝壺の底に横穴があるのだ

衛星では上空から見える範囲しか判らない

更に

横穴の周囲には特殊で強力な電磁場が形成されており、様々な遠距離測定機も役に立たない

まるで

神秘のヴェールに覆われているかのようだ

降下地点が近付いている

サトルは脳裏に浮かんだ思いを振り払った

パワードスーツを着装したサトルは軍用機から降下すると、そのまま滝壺へとダイブした

着水の衝撃は全く感じなかったが

サトルの眼前に映るモニターは、様々なデータを瞬時に示し、記録していく

パワードスーツは激しい水流の中ですぐさま体勢を立て直すと、速やかに横穴へと入って行った

ライトの明かりを頼りに暗い洞窟を進んで行く

サトルのパワードスーツは、例え大王イカのような生物に襲われても、無傷で制圧可能なだけの戦力を有していたが

何故かサトルは冷や汗をかいていた

幾つ目かの曲がり角を抜けた時に突然

広大な地下空洞に出た

そこで最初に目を引いたのは

月だった

まるで、十五夜のような美しい白黄色

いや、地下に月がある訳がない

ましてや科学万能の、この時代に

よく見ると

それは卵だった

まん丸で、光を放つ

満月そのもののような卵

龍の卵

それが地下空洞の上空に浮かんだまま静止しているのだ

科学万能のこの時代に

その後ろの闇から、姿を現したものがあった

[ようこそ、王の使いよ]

それはテレパシーだった

柔らかいテノール

声は女だったがその姿は、神々しい光を放つ



白銀の龍だった






上空で待機していた軍用機に無線が入る

『これから帰還する。王に通信。「託された」とだけ伝えてくれ』

『了解』

公式に残る通信はそれだけだった

程なくして

世界は最初で最後の生物を知る事となる

この世にたった一匹となる

神に等しき生き物を



それから幾ばくかの年月が経った頃





世界地図の中心に

神龍

と、云う国が出来た

慈愛と智慧と力に満ちたその王は

国境だけでなく、生き物の枠すら超えて絆を結び

永き平和をもたらしたと伝えられている