『沢田研二・正月LIVE・2020・名福東阪阪東・寡黙なROCKER』ライブ評 2020.1.19
NHKホール
世間はまだ正月気分がぬけきっていないのだろうか。靖國神社、明治神宮に参拝したが、大勢の参拝客。明治神宮で貰おうとした御朱印は1時間待ち。日本は極めて平和である。
沢田研二、正月ライブの千秋楽に参加した。ここ数年はライブが年を跨ぐことが多く、久々の正月ライブ。前の祈り歌LOVESONG特集では、みんな脱原発ソングで微妙な気持ちになり、しかも大雨に降られたから、久々のNHKホールだし、いい思い出頂戴よという思いが心を占めていた。
１曲目は柴山さんのベビーなギターか似合う『睡蓮』。２曲目は『お前にチェックイン』。この曲を聴くのは伝説の50曲ライブ以来である。歌いながら回る回る（笑）そしてMC。「世の中、何が起こるかわからないからシングル曲も歌っておかないと」、「ヒット曲を歌うのはいつも少ないですが2曲続けて歌います！」
そして『ダーリング』。ある意味このライブのハイライト状態で、沢田研二がキレッキレな動きにファンも嬉し笑い。実感したのは、阿久悠、大野克夫の偉大さだ。キャッチなメロディで、覚えやすい歌詞であるからファンの心に深く浸透し、手拍子が会場全体がバッチリ合っていたのが、この曲が愛されている証左てある。
『根腐れpolitician』もファンの間に馴染みのある曲になってきたようで、脱原発反政府ソングの中でも特に沢田研二の気合を私は感じた。
『涙のHAPPY NEW YEAR』を聴いて、脱原発ソングだけじゃなくて、こんなに切ないラブソングを、沢田さんもう一回書いてくださいと希求したファンは私だけではないだろう。
そして私にとって１つのハイライトとなったのは『Pearl Harbor Love Story』である。沢田研二が書いた歌詞を引用しよう。
PEARL HARBOR LOVE STORY 歌詞
歌：沢田研二
作詞：沢田研二
作曲：朝本浩文
エメラルドの海に
砕かれた二人の
哀しい伝説は叶わぬ純愛
二人の魂は
真珠貝の中で
永遠に結ばれた
Pearl Harbor Love Story
彼女はHawaiianタウマ
ふくよかな笑顔で
彼との小さな幸せ
夢見てた 15歳
彼はJapaneseマコト
涼やかな瞳の
彼女だけを
愛してた 17歳
マコトは移民の子
慎ましい暮らしの
タウマは生まれも良く
独りっ娘だから 二人
運命に裂かれる
許されぬ恋
神に全て委ねると覚悟
互いに慈しみ 育んだ夢
神の許し 胸焦がし待った
12月8日は
晴れわたり穏やか
近づく轟音は悲劇の序曲
二人乗せたカヌー
海の藻屑と消え
リーフに風荒ぶ
Pearl Harbor Love Story
タウマはマーメイド
海深く沈んで
マコトはドルフィンになり
追いかけ もつれ闇に
愛は幻覚に 輝いて燃え
歴史の渦 一瞬を奪う
二人行方さえ 解らずに謎
大人たちの 後悔は重く
12月8日の
5年後の雨の日
真珠貝が一つ
浜辺に寄せた
奇跡か偶然か
中にハート型の
物言わぬ真珠が･････｡
Pearl Harbor Love Story
彼女はHawaiianタウマ
たおやかな黒髪
彼との小さな命
望んでいた 15歳
彼はJapaneseマコト
端正な胸
彼女こそが
生きがいの 17歳
あまりに真っ直ぐな
幼気な愛
涙色の ひとしずく 憐れ
エメラルドの海に
砕かれた二人の
哀しい伝説は叶わぬ純愛
二人の魂は
真珠貝の中で
永遠に結ばれた
Pearl Harbor Love Story
この曲を作曲した朝本浩文氏は2014年に自宅近くで自転車走行中に転倒し、そのまま意識を回復することなく2016年に53歳の若さで亡くなっている。
私はこの曲を聴いて涙ぐんでしまった。理由としては沢田研二の純真な気持ちに触れたからである。ハワイの恵まれた少女と日系人の男の子の純愛物語。最終的には1941年12月8日の真珠湾攻撃で、カヌーに乗っていた2人の命は奪われる。最後は真珠貝の中で愛を結実するというメルヘンチェックな内容である。沢田研二なりの反戦歌であり、日本軍の爆撃で命をおとす話であり複雑な感情を抱きながらも、この曲の本質である愛の本質に心を揺さぶられるものがあったのも事実であった。これは私の中の課題だろう。
そして、『つづくシアワセ』。
つづくシアワセ 歌詞
歌：沢田研二
作詞：沢田研二
作曲：幾見雅博
つづく幸せ 平和な時を
許し合えるなら 最高だね
どんな時でも 野に咲く花の
やわらかな気持ちで
いられたら いいね
恋愛 結婚
勿論 勿論さ
愛しても 愛しても
愛したりなくて
夜が短い
ふるえたよ 若い日
想い出 一杯
刻みこまれた日々
優しさは 優しさで
優しく寄り添う
朝の温もりみたい
緑の草原 歩いてく
二人が見える
つづく幸せ 叶えられるよ
つつましく暮らせば 近づける
穏やかがいい 贅沢だけど
ずっと二人
一緒に暮らすよ いいね
一蓮托生
極楽 極楽さ
夢を見て 夢を見て
夢にうなされて
大人の今も
いつも謎だらけ
馬鹿な真面目は
傍目にも悲しい
楽しみは 楽しみで
楽しく遊ぼう
ガキに戻れば いいさ
夕焼け空を見上げている
二人が歌う
つづく幸せ 確かめたいな
君を思う魂の深さ
揺るがないもの 授かりたいな
君の明日もっと知りたいんだ
つづく幸せ 平和な時を
許し合えるなら 最高だね
どんな時でも 野に咲く花の
やわらかな気持ちで
いられたら
つづく幸せ 平和な時を
許し合えるなら 最高だね
どんな時でも 野に咲く花の
やわらかな気持ちで
いられたら いいね
コマーシャルでも使われた名曲で、やはり沢田さん、またこんな新曲を書いてください。改めて思う。
そして『お嬢さんお手上げだ』。マキノノゾミ氏の音楽劇場のペーソスとなった名曲。シングルカットされていないが、この会場のノリの良さ。やはり、阿久悠、大野克夫コンビですね。洒落た可愛い歌詞。阿久悠先生は天才です。
そして『6番目のユ・ウ・ウ・ツ』、隠れた名曲『単純な永遠』で本編は幕を閉じた。
アンコールでは方々から前情報を得ていたが、白い着物姿の『サムライ』は絶品であった。
やはり思い出すのは音楽劇『悪名』、『大悪名』であろう。歌に専念するために音楽劇を封印してしまったが、50年以上芸堂で生き抜いてきた男の風格を感じた。そして『涙 2020年バージョン』、『危険なふたり』でステージは幕を下ろした。
私が気になったのは沢田研二がMCで「いろいろあるから〜ヒット曲を歌う」と述べていたことである。これは天変地異、原発、テロや戦争のみを指すのではないと思う。やはり、昨年の萩原健一の訃報が沢田研二の心を動かしたのだと私は考えている。
加瀬邦彦が、2015年、井上堯之さんが2018年に亡くなる。それから、樹木希林、内田裕也、そして萩原健一と怒涛の如く訃報が続いた。ザ・テンプターズでデビューした萩原はある意味、ザ・タイガース と同期であり、グループ・サウンズ最終期を２つのグループが彩った。そして萩原健一はデビュー時16歳で、沢田研二より年下。GSでは最年少と言えるだろう。
沢田研二の体が健康だとしても、様々な思いが脳裡に交錯したのは間違いあるまい。他の日のMCだが、沢田が次のツアーでこれまであまり歌うことがなかった、『時の過ぎゆくままに』を歌うと宣言している。そして88歳までは歌いたいと話したそうだが、実現したとしても、あと16年しかない。
どの様にグループ・サウンズ時代に生き抜いたミュージシャンが幕を下ろすのか。
寂しいが難しい時代が来たのかもしれない。
グループ・サウンズに影響を与えたビートルズ メンバーの生演奏も、ポール・マッカートニー、リンゴ・スターが鬼籍にいれば終焉する。
リンゴは今年80、ポールは78。生きているとしても体を動かしていつまで演奏できるのか。
我々はその現実を直視せねばなるまい。
ライブ後に柴山和彦と沢田研二がステージに戻り、マイクを使わずに関東一本締めをした。
その元気さと、次のツアーへの意欲を励みにこれからも2人に注目していきたい。
2020.1月22日。 1992年にガンズアントローゼスを観た日に。
01.睡蓮
02.お前にチェックイン
03.ダーリング
04.根腐れpolitician
05.核なき世界
06.Fridays Voice
07.恨まないよ
08.涙のHAPPY NEW YEAR
09.静かなまぼろし
10.Pearl Harbor Love Story
11.つづくシアワセ
12.お嬢さんお手上げだ
13.Child
14.蜜月
15.感じすぎビンビン
16.6番目のユ・ウ・ウ・ツ
17.単純な永遠
アンコール
18.サムライ
19.涙
20.危険なふたり
